2019 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of strength of concrete by optical analysis of elements
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19K15068
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
江藤 修三 一般財団法人電力中央研究所, 電力技術研究所, 主任研究員 (00556748)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コンクリート / 圧縮強度 / レーザ誘起ブレイクダウン分光法 / 非破壊検査 / 自己吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,試験体寸法の影響を受けにくいコンクリートの圧縮強度推定法の提案を目的としている.コンクリートの圧縮強度は,コンクリートの諸物性の中でも特に重要な指標であり,打設時の品質検査や鉄筋コンクリート構造物の健全性評価にて利用される.一般的には,円柱試験体(コア)を載荷することにより圧縮強度を求めるが,本方法は破壊試験であり,コンクリート構造物からコアを採取する必要がある.構造物への損傷を最小限に留めるために,非破壊で圧縮強度を推定する方法の一つとして打音法や超音波法を用いることがある.しかし,骨材の偏在により超音波や音波の伝搬経路が影響を受けるため、圧縮強度の推定値にばらつきが生じる。そこで,本研究では光学的元素分析法(レーザ誘起ブレイクダウン分光法;LIBS)に着目した.本方法は,パルスレーザ光を照射して生成されるプラズマの発光を分光計測することで対象に含まれる元素の種類を同定する元素分析法である.計測で得られるスペクトルはコンクリートの「原子結合状態の強さ」と相関があり,コア寸法の影響を受けずに非破壊的に圧縮強度推定が可能であると考えられる.これまでに,2つのカルシウムのスペクトル強度の比が圧縮強度に比例することに着目して圧縮強度推定が行われてきた.しかし,モルタル試験体を用いた結果が報告されている一方,モルタルと粗骨材から構成されるコンクリートを用いた報告例は確認されていない.今年度は,圧縮強度の異なるコンクリート試験体を製作し,本試験体をLIBSにより計測した際のスペクトルの特性について調べた.その結果,圧縮強度推定に用いる予定であったカルシウムのスペクトルに自己吸収が生じ、スペクトル形状が骨材とモルタルとで異なることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に必要なコアを製作することができ,LIBSの初期結果が得られたため,研究はおおむね順調に進展していると評価した. 具体的には,圧縮強度の異なる試験体をLIBSで計測した時に得られるスペクトルの特徴を調べるために,水とセメントの比を変えることで,圧縮強度の異なる試験体を製作した.普通セメントを使用して矩形の型枠に打設し,脱型した後にコアを採取した.圧縮強度を破壊試験により求めた結果、製作した試験体は異なる圧縮強度であることを確認した。 LIBSの実験でパルスレーザ光を平凸レンズで集光し,プラズマの発光を分光器とインテンシファイア付きCCDで計測した.実験結果より,モルタルと比較して骨材を計測した場合にカルシウムのスペクトルの半値幅が増加することが分かった。これは、使用した骨材がカルシウムの元素濃度の高い石灰石であり,カルシウムの元素濃度が高い場合に,レーザ誘起プラズマ内部より生じるカルシウムの発光が,レーザ誘起プラズマ周辺に存在するカルシウム原子に吸収される現象(自己吸収)が生じ、スペクトルピークが実際よりも低く観測されたことが原因であると考えられる.このように、コンクリートを計測する場合には,骨材とモルタルを計測する時で自己吸収の影響が大きく異なることが明らかとなり,自己吸収を考慮してスペクトル強度を補正する必要があることが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,自己吸収を考慮したスペクトル強度の補正を行うことで,カルシウムのスペクトル強度の比が圧縮強度に比例することが報告されている.そのため,骨材とモルタルのスペクトルを別々に取り扱い,それぞれの材料に適したスペクトルの解析方法を開発することが一案として考えられる.そのために、両者を計測した時に得られるスペクトルの違いから,そのスペクトルが骨材由来かモルタル由来かを判別する必要がある.また,計測条件についてもより広く検討する必要がある.現状では,カルシウムのスペクトルのみに着目しているが,スペクトル強度が圧縮強度と相関の有る元素は他にもあると考えられるため,様々な計測条件で計測を行い,他のスペクトルが圧縮強度推定に活用できるかどうか調べる.
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Causes of Carryover |
他の研究で使用する試験体と合同で打設を行い,コンクリートの製作費用が当初の見込みよりも少なくなったため.明らかになった課題に対して必要となるコンクリート試験体の製作費用や光学部品の調達に充当する予定である.
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Research Products
(1 results)