2019 Fiscal Year Research-status Report
一般道路橋を対象としたセルフキャリブレーション機能を有するB-WIMの研究開発
Project/Area Number |
19K15071
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
竹谷 晃一 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (70803526)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 橋梁 / B-WIM / 機械学習 / ウェーブレット散乱 / ニューラルネットワーク / 振動応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに,橋梁の動的な構造応答を計測するシステムの構築を行った.先行研究で使用した加速度センサは分解能やシステムの安定性に課題があったため,センサを改良して無線通信機能を搭載した.そのうえで,山梨県にある一般道路橋にセンサを設置して半年間の計測を行った.また,軸重が既知である試験車を対象橋梁上に走行させ,センサによる振動計測と,ビデオカメラによる撮影を行った. つぎに,機械学習を用いた分析プログラムの開発を行うため,計測した加速度データを用いて,学習方法と入力データの検討を行った.学習プロセスにおいて重要である教師データの作成では,1日分のビデオ画像から車種や走行位置などの情報を取得するラベリングを1つずつ手作業で行った. つぎに,センサから得られる加速度応答から車種を識別することを目的として,入力データとなる特徴量の抽出を行った.本研究では,一般的な振動分析であるフーリエ変換によるパワースペクトルや,ウェーブレット変換を用いたスペクトログラムなどを入力データとすることを試みたが,データ数が不足するため学習を十分に行うことが困難であった.この課題を解決するため,ウェーブレット散乱を利用した特徴量の抽出に着目した.ウェーブレット散乱係数を時間方向に分割してそれぞれを1つの学習データとすることで,学習データを増加させた. そのうえで,比較的層が浅いニューラルネットワークを構築して学習を行った結果,課題の1つである「車両識別」において,乗用車や大型車の識別のほか試験車や路線バスを十分に識別できる精度を実現した.一方で,橋梁の振動応答は経年劣化や季節により変動する可能性があり,季節が異なる計測データを使用した場合の適用性などの分析を進める必要があると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に計画していた計測システムの構築を行い,実橋梁にセンサを設置して半年以上の計測データの蓄積を行った.また,重量既知の試験車を手配した計測実験も計画を前倒しで実施し,大きなトラブルなく計測データを取得できた.一方で,対象橋梁の工事が始まったため2020年4月以降の計測ができていないことと,COVID-19の影響で新たな計測環境を整える見通しが立っていないことが懸念されるが,これまで計測したデータを分析することで対応できると考える. 機械学習を用いた分析プログラムの開発においても,最も時間がかかる教師データの作成がおおむね完了したことと,当初予定していた入力データの検討とニューラルネットワークの構築を進めて一定の成果が得られたため,順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
機械学習を用いた分析プログラムの開発を引き続き進める予定である.とくに,路線バスなど常時走行する車両を利用することで,B-WIMで必要な「影響線の推定と補正」を行うセルフキャリブレーション機能の構築を行う.これまでに検討した「車両識別」において,路線バスを識別することが達成できたため,路線バスが通過するときのたわみ応答と路線バスの情報を利用することで「影響線の推定と補正」を目指す.橋梁のたわみ応答は一般的には直接計測することが難しいため,加速度データを積分する方法の検討を進める.加速度の積分は低周波ノイズの影響を強く受けるため一般的には困難であるが,本研究で使用している高精度の加速度センサと,基線補正等によるデジタル処理によって実現する予定である. 実橋梁への適用については,これまで対象としていた橋梁の工事開始とCOVID-19の影響で新たな計測環境を整える見通しが立っていないが,これまで計測したデータを利用することで対応できると考える. 研究成果の公開についても作業を進めており,国内外での学会発表と論文投稿を行う予定である.
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Causes of Carryover |
2020年4月に転職で所属機関が変更となったため,新たな勤務先において当該研究に必要な設備分の金額を次年度分とした.
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