2019 Fiscal Year Research-status Report
大規模構造物の地震応答解析の品質保証に適した弾塑性理論の再構築
Project/Area Number |
19K15073
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
本山 紘希 香川大学, 四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構, 寄附研究部門教員 (00732281)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 数値解析の収束性 / 数値解析の品質保証 / 弾塑性理論 / コンクリート材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で目標とする弾塑性理論の再構築では、適当なサイズの領域で応力やひずみなどを均質化する理論の構築を目指している。これにより、コンクリート材料などの計算で見られる変形が局所化する現象を解決し、数値解析の収束性を確認できる数値計算手法を構築すること、また、それにより数値計算の品質保証に貢献することが目的である。 2019年度は、実施計画通り、数値計算に適用できる理論の定式化を試みた。まずは、既存の手法に近い理論として応力を領域の最大値で均質化する方法の定式化を行い、単純な弾塑性問題では適切な収束解が得られることを確認した。これを、コンクリート材料を対象に、プログラムへの実装を行った。具体的には、使用する有限要素プログラムで、領域サイズの設定に応じて要素ごとに領域を抽出し、領域内要素の最大応力で領域内の全要素の応力を均質化するサブルーチンを作成した。しかし、有限要素プログラム内で安定化させることが困難であることが分かった。均質化により与えられる応力が要素の状態変数と整合するような収束計算が難しいためであると分析した。 改めて、数値解析での安定化を考慮しつつ、原理的に上記と等価な理論として、塑性ひずみ増分を領域の最大値で均質化する理論の定式化を行った。数値計算では、均質化により各点に与えられる塑性ひずみ増分は、見かけ上の物体力として付加すれば良いことになるため、状態変数は適切に計算されることが想定され、既存のプログラムで安定化が図りやすい。一方で、プログラムへの実装では、塑性ひずみ増分から物体力を計算し外力に加算する必要があり、プログラムへの実装作業では、有限要素プログラムの広範な部分の改良が必要である。応力の均質化で作成したサブルーチンを利用しながら、実装作業を進めている。本作業が完了することで、収束性を検討可能な有限要素法プログラムが構成される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の一番大きな実施予定項目は、新しい弾塑性理論の構築と理論的な検討である。また、構築する理論は、数値解析を行う上で安定性を有する必要がある。理論の方向性は適切な変数の領域における最大値での均質化として明確化していた。数値解析を行う上での安定性は、いくつかの選択肢の中から試行錯誤が必要であることを想定していた。想定の中で、単純な弾塑性材料における定式化と理論的な検討はクリアした。単純な条件においては、数値計算でも確認できることを確認した。 一方で、本年度の最も重要な成果であるが、コンクリート材料を想定した複雑な条件での数値解析の安定性は、最も単純な理論である応力の均質化では困難であることを発見した。数値解析の安定化に必要な条件がクリアになり、それに応じた塑性ひずみ増分の均質化の理論の構築へ移行し、本理論の構築を行った。応力の均質化で数値解析上不安定になる部分を回避した数値解析手法が構築可能である点が重要である。 理論の構築が完成し、理論的な検討も完了したため、おおむね当初予定通りである。2020年度に予定している、開発中の有限要素プログラムへのコンクリート構成則としての実装も問題なく着手できる(一部着手中)。これを鑑み、区分(2)とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的であるコンクリート材料などを想定した弾塑性理論の再構築は、予定通り進展しているため、2020年度以降も予定通りに進めることを基本と考える。2020年度は、特にコンクリート材料を念頭に、新しい弾塑性理論を元に構築した構成則を開発中の有限要素プログラムに実装し、これを完了する予定である。既に一部着手中であり、要素を超える領域での状態変数の計算などは実装済みである。新しい理論で必要となる均質化した塑性ひずみ増分に相当する見かけ上の物体力の計算と外力への加算部分について引き続き実装を進める。 加えて2020年度は、開発したプログラムの適用性を検討するため、適切な部材での数値実験を行う。本研究では、数値解析の収束性が重要な点であるため、数値実験においては、複数の要素サイズのモデルを作成し、収束性を吟味する。 部材での数値実験により実構造への適用への課題を整理し、2021年度の予定項目である原子力発電所の建屋などの大規模施設への適用性について検討を行う。
|
Causes of Carryover |
開発プログラムが並列計算を前提としたものであり、必要な計算環境の確保のための費用を想定していた。申請からの減額もあり、十分なテストを行う金額が確保できなかったため、次年度の計算環境に想定している予算と合わせて計算環境の確保を行い、予算の使用をする計画である。
|