2019 Fiscal Year Research-status Report
地震動被害高精度予測を目指したアウターライズ地震の広帯域強震動予測手法の開発
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19K15075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
重藤 迪子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (90708463)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アウターライズ地震 / 強震動予測 / 長周期地震動 / 短周期レベル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アウターライズ地震における強震動予測の高精度化を目的に,日本海溝~千島海溝周辺で発生するアウターライズ地震の陸域・海域で観測された地震記録を解析し,その震源特性,伝播経路特性の解明を行う.また大規模なアウターライズ地震が発生した場合,その強震動は短~長周期に固有周期を持つ建築物に対して重大な影響を及ぼす可能性があるため,広帯域強震動評価のための深部地下構造の高度化を併せて実施する. 初年度は,主に対象地域における強震記録の収集・整理,データベースの構築,研究対象観測点の選定を行った.2016年以前は陸域で観測された強震記録,以降はS-netの海域の観測記録を含めて検討する.日本海溝周辺のアウターライズ領域から数百キロ離れた陸域の強震記録の解析からは,スラブ内地震同様に,浅い正断層型のアウターライズ地震でも短周期励起特性が大きいことが明らかになっており,海域の観測記録の分析を加えることで,次年度実施予定の伝播経路特性の評価,震源モデルの構築の高精度化を図る. また,研究実施工程は当初予定と前後するが,最終年度で遠方の堆積平野に及ぼす影響評価として実施する長周期地震動シミュレーションの対象地域である石狩低地帯の地下構造調査を実施した.同領域では,2018年9月6日に北海道胆振東部地震(Mw 6.6)が発生し,研究代表者らは,地震直後から強震記録の収集・分析,臨時強震観測,微動アレイ観測を実施しており,本研究でもそれらの成果を利用するとともに,追加の微動アレイ観測によりS波速度構造モデルを構築し,データの充実を図った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,強震記録の収集・整理,データベースの構築,研究対象観測点の選定を実施し,次年度実施する伝播経路特性の検討,震源モデルの構築の準備が整った.また,当初2020年度に実施予定の石狩低地帯における微動アレイ観測を繰り上げて実施し,2018年9月6日北海道胆振東部地震の余震記録の分析と併せて検討し,浅部~深部速度構造のモデリングに利用するデータ収集・充実を図った.この成果の一部は国内学会で発表している.全体工程としては予定通りに進んでおり,以上よりおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,継続して余震観測記録を用いた対象地域の地下構造の検討を行うと共に,以下2課題を実施する. Ⅰ. アウターライズ地震の伝播経路特性の検討 日本海溝周辺で発生するアウターライズ地震は,陸域の強震観測点から数百キロ以上離れた場所で発生するため,陸域のみならず海域の地震観測点における観測記録を用いて,日本海溝周辺で発生するアウターライズ領域から陸域間の伝播経路特性の評価の精度向上を図る. Ⅱ. アウターライズ地震の広帯域震源モデルの構築 近年日本周辺で発生した,日本海溝~千島海溝周辺で発生したM 7以上のアウターライズ地震を対象に,既往震源モデルの収集行い,さらに経験的グリーン関数法により広帯域震源モデルを構築し,データベース化する.2007年千島列島沖アウターライズ地震(Mw 8.1),2011年三陸沖アウターライズ地震(Mw 7.6)を主な対象とする.推定したアウターライズ地震の震源パラメータを整理し,他の地震タイプのそれと比較する.既往研究では,その短周期レベルがスラブ内地震と同様に大きいという結果がある一方で,スラブ内地震とプレート境界地震の短周期励起特性は,テクトニック環境の違いにはよらず,震源深さに依存する結果が報告されている.震源深さの浅いプレート内で発生するアウターライズ地震の短周期励起特性について,Ⅰでの検討結果を考慮することで,その推定精度の向上を図る.
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた観測および打ち合わせ等が新型コロナウイルス感染症拡大に伴い延期となったため,次年度の研究成果公表や消耗品等の経費として使用することに変更した.
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Research Products
(1 results)