2019 Fiscal Year Research-status Report
複合要因による損傷を有した鋼・コンクリート接合部の耐荷性能および危険性評価
Project/Area Number |
19K15079
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
宗本 理 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (70737709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乾燥収縮 / 鋼・コンクリート定着部 / 付着性能 / 両引き引張試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,甚大な被害にも繋がる重要な箇所に使用されやすい鋼・コンクリート接合部を対象に,力学的要因(動的荷重)と環境的要因(鋼材の腐食やコンクリートの乾燥収縮)による損傷度を統一的かつ定量的に評価可能な解析手法の開発を目指している。当該年度は上記の目標に向けて環境的要因であるコンクリートの乾燥収縮が鋼・コンクリート定着部の付着性能に及ぼす影響について実験的検討を実施した。 具体的には、早強モルタルブロック(150×150×150mm)に異形鉄筋D25(材質SD345)を貫通させた供試体を対象とし、乾燥養生による期間を14日と28日の2種類変えた試験ケースを用意した。なお、試験体内部のボルト定着部および試験体表面にひずみゲージを貼付することで養生期間中の乾燥収縮ひずみをモニタリングした。養生後、その試験体を対象とした両引き引張試験を行い、ボルト定着部に貼付したひずみとモルタルのヤング率により算出した付着応力により乾燥収縮による影響について考察した。 その結果、JCT TC911委員会による乾燥収縮ひずみの予測式に短期間の養生期間でも比較的近い結果が得られることが分かった。さらに、両引き試験による付着特性に対する養生期間の影響に関して、最大付着応力は本試験の養生期間では乾燥収縮による影響は見られないことを確認した。一方で、初期剛性に関しては養生期間が長くなるにつれ約30%低減する結果となった。これらの結果と既往の研究データを活用し、養生期間-初期剛性の低減率に関する関係式を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、乾燥収縮が鋼・コンクリート定着部の耐荷性能に与える影響を把握するため,まずボルト径や埋め込み深さ,コンクリートの配合は一定とした上で,養生条件を28日湿潤のみと28日湿潤+乾燥の2種類に区分する計画であった。また、当該年度は実験環境整備の遅延があったものの、養生条件を2種類変えた実験を実施することができた。しかし、研究を遂行するにあたり、乾燥収縮が与える影響を定量的に把握するためにはより養生期間が長い試験体によるデータも蓄積する必要があり、次年度に向けて現在計画中である。 そのデータも収集した上で今後学会などを通じて情報を発信していく予定である。 また載荷試験において、当初の計画では静的荷重と動的荷重による載荷を計画していたが、実験環境の整備に遅れが生じたことや上記の課題も踏まえた上で、静的荷重による両引き試験のみを実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策を以下に示す。 1)当該年度における研究データの補完 当該年度実施した乾燥収縮が鋼・コンクリート定着部に及ぼす影響に関する実験的検討において、養生期間の適用範囲が狭く汎用性や実験結果の妥当性の観点を考慮すると、養生期間が長い試験体による検討も必要である。そのため、昨年度の試験データを補完できる試験ケースによる実験的検討を現在計画している。 2)損傷統一力学モデルに関する解析的検討 環境的要因であるコンクリートの乾燥収縮によるひび割れと力学的要因である荷重による損傷を数値解析により定量的に評価するため,環境的要因と力学的要因を損傷力学に基づいた損傷度として統一的に評価できるモデルを提案し、そのモデルの妥当性について検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、当初の計画では実験に伴い超音波試験機のレンタルを計画していたが、載荷試験による試験体の損傷が目視で確認できるレベルであったことから当該年度は超音波試験機のレンタルを中止したことが挙げられる。また、実験するにあたり計測設備の不具合もあり、新たに計測機器が必要となり購入している。これらの余剰分が次年度使用額として余る結果となった。 次年度には当該年度の実験データを補完するための実験を実施する計画があり、その実験の試験体製作費として次年度使用額を充てることを計画している。
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Research Products
(1 results)