2021 Fiscal Year Research-status Report
複合要因による損傷を有した鋼・コンクリート接合部の耐荷性能および危険性評価
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19K15079
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
宗本 理 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (70737709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乾燥収縮 / 自己収縮ひずみ / 温度応力解析 / 鋼・コンクリート定着部 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では「本研究の目的」の1つである「コンクリートの乾燥収縮によるひび割れと外力による損傷を統一的に評価可能なモデルの提案」に対して、コンクリートの乾燥収縮による初期欠陥が鋼・コンクリート定着部の構造性能に及ぼす影響について解析的検討を実施した。昨年度に本課題で実施した乾燥収縮に関する実験ではコンクリート内部の温度変化による自己収縮や水分移動による乾燥収縮などの複合作用が考えられたため、本解析では温度変化による自己収縮に着目した研究を遂行した。なお、本研究では汎用解析ソフトウェアMSC. MARC2018を使用した。 具体的な研究内容として、まず実橋脚柱部の断面を対象とした温度解析より橋脚表面と内部における温度の経時変化を比較することで本解析手法の妥当性について検証した。次に、本解析手法を用いて、異形鉄筋D35を埋設したコンクリート供試体表面を長期にわたり乾燥収縮させた後に両端引張試験を行い、鋼・コンクリート定着部の付着性能について検討した実験を対象に温度応力解析を実施し、コンクリート内部の温度変化による自己収縮が及ぼす影響について検討した。 その研究成果として、CFT橋脚断面を対象とした温度解析では熱流束に基づいて表面および内部における温度の経時変化を良好に再現できたため、本解析手法が有用であることを確認した。さらに、本課題で実施した乾燥収縮に関する実験を対象とした温度応力解析では供試体の寸法が小さく,水セメント比が高い場合に温度変化による自己収縮と水分移動による乾燥収縮の複合作用が考えられる本実験の乾燥収縮ひずみに対してコンクリートの温度変化による自己収縮の影響は小さく、コンクリート内部の水分移動を今後考慮する必要があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、鋼・コンクリート接合部を対象とした数値解析においてコンクリートの経年劣化に関連した環境要因の1つであるコンクリートの乾燥収縮による影響を考慮可能なモデルを構築し、実験では困難な実規模サイズの鋼・コンクリート接合部を対象とした定量的耐荷性能評価を実施し,健全な状態における耐荷力に対する減少比率から接合部の危険性を評価することを目標としていた。 今年度の研究を遂行するにあたり、本研究で対象とした乾燥収縮によるコンクリートのひび割れに関する影響を定量的に評価するためにはコンクリート打設時から強度発現時までにおけるコンクリート内部の温度変化による自己収縮ひずみを適切に評価することで再現できると推測していた。 しかし、長期間の乾燥収縮や試験体寸法が小さい場合におけるコンクリートのひび割れを適切に評価するためには、自己収縮の他にコンクリート内部の水分移動による乾燥収縮の複合作用を適切に考慮する必要があることを確認した。 上記の事情に加え、COVID19への対応や解析環境整備の遅延なども今年度の計画が遅れた理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策を以下に示す。 1)コンクリート内部の水分移動を考慮した湿気移動解析に関する検討 乾燥収縮によるコンクリートのひび割れを適切に評価するためには、当該年度に実施したコンクリート内部の温度変化による自己収縮ひずみに加え、コンクリートの水分移動による乾燥収縮ひずみを考慮する必要がある。そのため、既往研究を参考にコンクリート内部の水分移動を考慮した湿気移動解析に関する検討を行った上で、自己収縮との複合要因を考慮した乾燥収縮によるコンクリートのひび割れを定量的に評価可能な解析手法を提案する。 2)実規模サイズの鋼・コンクリート接合部を対象とした定量的耐荷性能評価 上記で提案した解析手法を用いて、実規模サイズの鋼・コンクリート接合部を対象とした定量的耐荷性能評価を実施し,健全な状態における耐荷力に対する減少比率から環境的要因および力学的要因が鋼・コンクリート接合部の耐荷性能に与える影響および危険性について評価する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究を遂行するにあたり、本研究で対象とした乾燥収縮によるコンクリートのひび割れに関する影響を定量的に評価するためにはコンクリート打設時から強度発現時までにおけるコンクリート内部の温度変化による自己収縮ひずみを適切に評価することで再現できると推測していた。しかし、長期間の乾燥収縮や試験体寸法が小さい場合におけるコンクリートのひび割れを適切に評価するためには、自己収縮の他にコンクリート内部の水分移動による乾燥収縮の複合作用を適切に考慮する必要があることを確認した。上記の事情に加え、COVID19への対応や解析環境整備の遅延が生じたことにより、当初参加を予定していた学会等の参加費が未使用となり次年度使用額が生じた。 次年度には上記した課題であるコンクリート内部の水分移動による影響を適切に評価可能な手法を提案した上で研究成果を土木学会もしくは日本コンクリート工学会にて発表する予定である。次年度使用額は解析環境を維持するためのソフト更新用の保守費用や学会参加費、旅費などに充てる予定である。
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