2019 Fiscal Year Research-status Report
衛星観測による瞬時値情報を用いた時間積算降水量推定手法の開発
Project/Area Number |
19K15096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内海 信幸 東京大学, 生産技術研究所, 博士研究員 (60594752)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 降水 / 衛星リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、瞬時値しか得られない人工衛星による降水観測情報から、実用上求められる時間スケール(30分程度)の時間積算降水量を推定する手法の開発を目的とする。多くの応用分野で利用されている衛星観測による全球降水プロダクトは、入力値として30分程度の時間代表性を持つ降水観測値を必要とする。しかし現在、高精度の降水推定が可能なセンサー(レーダーおよびマイクロ波放射計)は地球を周回する人工衛星に搭載されており、そこからは衛星が対象地点上空を通過する一瞬の瞬時値しか得られない。このため、求められる時間スケールとの間にギャップが存在する。この問題の解決のため本研究では、上空の降水粒子が地上に到達するまでに時間差があることに着目し、一瞬の観測情報から30分程度の積算降水量を推定する。 今年度は衛星搭載レーダー観測を用いて降水鉛直分布の特徴について解析を行った。また研究代表者が提案している手法(降水の鉛直分布情報から地上降水量の時間積算量を推定する手法)において、降水の高さや大気状態(相対湿度等)を考慮して精度向上を図る方法を検討すると共に、これを衛星搭載レーダーによる観測情報に適用し、その効果を検証した。 またマイクロ波放射計観測から降水の鉛直分布を推定する手法(EPCアルゴリズム)の開発を行った。これは米国ジェット推進研究所で開発が行われている降水量推定アルゴリズムを基にしたものである。現在は開発したEPCアルゴリズムによる降水鉛直分布推定値の検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り衛星搭載レーダー観測データに基づき、瞬間的な降水鉛直分布情報を用いることで地上降水量の時間積算量の推定精度が向上することを確かめ、さらに降水の高さや大気状態を考慮する方法についても検討を行った。 また提案手法をマイクロ波放射計観測に適用できるかどうかを探るため、まずマイクロ波放射計による降水鉛直分布の推定アルゴリズム(EPCアルゴリズム)の開発を行った。EPCアルゴリズムによる降水鉛直分布の推定は現在も実験と検証を進めているが、北米での前線性降水の事例について試験的に行った推定では良好な結果を得ている。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
提案している手法を衛星搭載レーダー観測情報に適用した場合は良好な結果が得られることが確かめられた。次のステップは衛星搭載レーダーよりも運用数が多く、高頻度・広領域の観測情報が得られるマイクロ波放射計観測への適用可能性を探ることである。 このために今年度はマイクロ波放射計による降水鉛直分布推定のアルゴリズム開発をまず行った。今後は開発したアルゴリズムの検証を行うと共に、マイクロ波放射計によって推定した降水鉛直分布に対して提案手法が有効に働くかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
データ解析用ワークステーションの購入を予定していたが、今年度は解析手法やコンピュータコードの効率化により既存の機器で対応することができたため、ワークステーションの購入を見送った。 来年度はデータ量や計算量の増加を考慮しながら改めて機器の購入を検討する。
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