2022 Fiscal Year Research-status Report
衛星観測による瞬時値情報を用いた時間積算降水量推定手法の開発
Project/Area Number |
19K15096
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
内海 信幸 京都先端科学大学, ナガモリアクチュエータ研究所, 助教 (60594752)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 衛星リモートセンシング / マイクロ波 / グリーンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,瞬時値しか得られない人工衛星による降水観測情報から,実用上求められる時間スケールの時間積算降水量を推定する手法を開発するものである. 今年度は,特に固体降水が卓越する高緯度域における地表面のマイクロ波特性が,低軌道衛星に搭載されたマイクロ波放射計による降水量推定値に与える影響について分析を行った. グリーンランドは,氷河の水収支が世界の海面水位に大きな影響を与えることが報告されるなど,その水収支を正しく把握することは世界の水循環を考えるうえでも重要になる.地上観測網が限られたグリーンランドのような地域では,衛星観測を用いた降水量推定が有用である.しかしながら,低軌道衛星に搭載されたマイクロ波センサーを用いた降水量推定では,グリーンランドにおいて十分な精度が得られていないことが報告されていた. そこで,全球降水観測計画(GPM)主衛星に搭載されたマイクロ波放射計GMIを用いて,グリーンランド南部の地表面のマイクロ波の特性を分析した.積雪に覆われた地表面では一般に,地表からのマイクロ波射出のうち高周波数のものは雪により散乱され,TBが大きく低下する.この効果で,高周波数の輝度温度(TB)が低周波数TBよりも小さくなる傾向がある.本研究ではGMIで観測されたマイクロ波TBのうち,19GHz垂直偏波のTB(TB19V)と89GHz垂直偏波のTB(TB89V)の差(TB19V-TB89V)を積雪による散乱の指標として分析を行った.その結果,グリーンランド南部の積雪面は一般的な積雪面と異なり,積雪散乱のシグナルが見られない(散乱指標が負になる)ことが確認された.これは,グリーンランドでは一般的な積雪面とは異なる地表面マイクロ波特性を前提として降水量推定を行う必要があることを示しており,今後の降水量推定の改良につながる知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低軌道衛星に搭載されたマイクロ波放射計による降水推定の改良について,グリーンランドのような特殊な性質をもつ地域にまで対象を広げて分析を進めており,順調に進展している.一方で,海外学会等における成果発表をより広く行うべきと判断したため,翌年度への延長を行うこととした.
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Strategy for Future Research Activity |
低軌道衛星に搭載されたマイクロ波放射計による降水推定の改良について,グリーンランドのような特殊な性質をもつ地域にまで対象を広げて分析を進めてきている.得られた知見に基づき,特殊な地域にも対応できるよう,推定手法の改良を進めるとともに,海外学会等で研究成果の発表を広く行っていく.
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Causes of Carryover |
当初はデータストレージ等を追加購入する予定であったが,今年度は解析方法の工夫等により既存設備を用いた解析を行うことができた.今年度までに得られた知見を応用し,さらに解析を行うため,来年度にデータの追加収集を行い,それに合わせたデータストレージの増設を予定している.このため,次年度使用額が生じた.
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