2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of integrated inundation risk assessment method using fine-resolution wave surge coupled model
Project/Area Number |
19K15098
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中村 亮太 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90805938)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高潮 / 波浪 / 転倒率 / 高解像度浸水計算 / 構造物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,メソスケール数値計算結果を外力とした超高解像度高潮・波浪結合数値計算システムを構築して,その数値計算結果を観測値と比較・検証した.その後に,高潮浸水域において人的被害を定量的に評価した.ここでは,2014年12月に発生した温帯低気圧による北海道根室市における高潮浸水を対象事例とした. 東北地方太平洋側~北海道周辺海域を含むメソスケールの数値計算結果では,非構造格子海洋流動・波浪結合数値計算モデルにより算定された有義波高・水位は観測値とよく合致していた.特に温帯低気圧の接近にともなって,海面の水位が徐々に増加する傾向が算定されており,実際の現象を捉えていた.そのため,根室市弥生町および根室港周辺域を対象とした超高解像度数値計算の外力として,メソスケールの数値計算結果を用いることができると判断した. 次に,最小格子を約1~3(m)程度として,北海道根室市周辺域における住居や海岸構造物を数値計算モデル上で緻密に再現した.浸水域における浸水深の算定値は,複数の研究グループが実施した現地調査による計測値とおおむね合致していた.ここで,流速の最大値は1(m/s)を超える程度となっていた.また,流体場の強度の指標となる流速の二乗と水深の積の最大値は0.15程度と比較的小さく,構造物に対する影響は小さいことが算定された.また,流速・水位の算定結果を用いて,人間の転倒率を複数の実験式を用いて評価した.人間の転倒率の危険度は,5歳児を想定した場合においても最大約0.6となっており(危険度の最大値は1),人的被害の程度も比較的小さかった.実際に,2014年の根室市における高潮浸水事例では,物的・人的被害は限定的であった.そのため,実際の被害の程度と符合する計算結果を構築したシステムより得ることができた.最後に,上記の研究結果は2019年度に学術論文として結実していることを付記する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において,波浪も考慮した超高解像度高潮数値計算に関する方法論を構築できており,過去に現地調査に赴いた事例(2014年北海道根室市の高潮浸水事例)に適用した.これは申請時における当初の計画通りである.また,流速・水位の算定結果を基にして,人間の転倒率による人的被害を定量的に評価した.その結果は,2014年根室の高潮浸水事例における被害の程度と概ね符合していた.更に高潮と同じ長波の特性を持つ津波浸水による危険度評価も他の地域において実施したため(この研究結果に関する論文は令和2年度に登載決定となった),当初の予定以上に研究は進んでいると考えている. ただし,高潮浸水が発生した領域における人間の転倒率の評価する際に,水理実験による流体場の補正計算を行っていない.そのため,令和2年度以降に実施する研究では,数値計算モデルと水理実験の流体場を比較・検証して,流体場の補正計算を実施する必要があると考えている.したがって,総合的に考えて,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度においては,超高解像度高潮・波浪の数値計算結果を外力に用いて,漂流物の数値計算とそれによる危険度評価を実施する予定である.具体的には,2018年9月に大阪湾で発生した台風Jebiによる高潮浸水被害で確認されたコンテナの漂流・打ち上げ事例に適用することを考えている.コンテナ漂流の数値予測計算では,風・波浪・流速等の物理場の時空間変化を考慮して,コンテナ漂流の軌跡を高度に解析可能な方法論を令和2年度内に構築する予定である. また,コロナウイルスの感染拡大の影響で,研究活動がある程度制限されているため,令和2年度以降に水理実験が実施できるかどうか不明である.しかし,水理実験を実施するか既往研究より引用することで,超高解像度数値計算モデルの精度を検証したいと考えている.特に現地調査では,人間の転倒率に大きく影響する流速に関する情報を得ることが難しいため,数値計算モデルの流速の算定精度を水理実験の結果を用いて検証したいと考えている.
|
Research Products
(1 results)