2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of integrated inundation risk assessment method using fine-resolution wave surge coupled model
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19K15098
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中村 亮太 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90805938)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コンテナ漂流 / ダムブレイク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,高潮浸水が引き起こすコンテナの漂流計算を含めた統合的な高潮浸水数値計算を実施した.特に,数値計算モデルによる風場,海洋流動場の算定結果を用いたコンテナ漂流の数値計算スキームを開発した.開発したスキームは,2018年大阪湾で発生した台風21号による高潮浸水で発生したコンテナ漂流に適用した.数値解析結果より得られたコンテナの漂流後の着地地点は,現地調査で確認されたコンテナのうちあげ位置とおおむね符合していた.このように,実現象と符合するコンテナ漂流の数値計算スキームを高潮・高波浪数値計算に本年度で組み込めたため,高潮浸水域におけるコンテナ漂流を含む統合的なリスク評価法を構築できたと考えている.この研究成果については現在英文論文を執筆中である. 次に,実験スケールにおけるコンテナの漂流軌道の数値計算を実施した.実験スケールの数値計算では粒子法を支配方程式としているDualSPhysicsを用いて数値波動水槽を構築して,ダムブレイクによるエプロン上のコンテナの漂流に関する数値解析を行った.当該研究で模擬した数値波動水槽の諸設定は,研究代表者も共著者であるアメリカ土木学会に過去に受理された学術論文における水理実験を参考にした.この数値波動水槽で算定されたダムブレイクによる波高と流速は実験値と比較的符合しており,DualSPhysicsを用いた数値波動水槽は流体現象を定量的に評価できていた.そして,エプロン上に配置されたコンテナの漂流距離と最大拡散角度に基づいて評価したところ,コンテナの漂流距離の結果は過小評価していたものの,最大拡散角度は既往実験の結果で得られた範囲内であり,実現象と符合していることを確認した.なお,実験スケールの数値計算の研究成果は,令和3年度土木学会論文集B3(海洋開発)に登載が決定している学術論文として結実していることを付記しておく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
統合的な高潮浸水域リスク評価法を確立するための主要な研究項目であった,実スケールと実験スケールにおけるコンテナ漂流の数値計算法を本年度中に確立できた.従って,本年度をもって実質的に当研究応募時の目標をほとんど達成しており,当初の計画以上に研究が進展していると評価した.ただし,実験スケールにおけるコンテナ漂流の数値計算評価は過小評価していたため,このスケールにおける数値計算の高度化が必要であると考えている.また,実スケールの数値計算結果に関しては,研究応募時の予定であった2014年の北海道根室と2018年大阪湾における高潮浸水事例の2事例に適用したのみである.従って当初の予定は達成したものの,依然としてサンプル数が少ないと考えており,適用事例を増やすことを検討している.そして,令和2年度には人間の転倒率の補正計算を行うために,海洋流動数値計算モデルの流速の平面分布を比較検討する予定であった.ここで,海洋流動場にも支配されるコンテナ漂流の軌道計算が実スケールにおいて符合していたことより,海洋流動モデルによる流速分布は実現象をある程度捉えていると判断しているが,可能であれば実験スケールにおいても海洋流動モデルの算定結果についてより厳密な評価を行う必要があるとも考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で科学研究費応募時の研究提案内容をほぼ達成したものの,上述したように実験スケールの数値計算では,コンテナの漂流距離の過小評価という課題が残されている.従って,最終年度には,実スケールと実験スケールの数値計算をより高度化することで,高潮浸水域の統合的なリスク評価の更なる高度化を試みる.さらに,2019年度には東京湾においても高潮・高波浪場が観測されており,それらを数値計算の対象とすることで適用事例を増やすことを検討している.そして,実スケールにおける海洋流動モデルによる流速場を定量的に評価することで,数値計算モデルを用いた統合的な浸水域のリスク評価手法をより高度化する必要もあると考えている.また,水理実験は既往研究より引用しているため,本年度では所属する研究機関において水理実験を実施することも検討している.
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