2020 Fiscal Year Research-status Report
波浪を気候要素とした全球気候モデル開発と気候変動による沿岸災害評価
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19K15099
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
志村 智也 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70789792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 波浪 / 全球気候モデル / 気候変動 / 大気海洋相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動が顕在化し極端な気象現象による災害の深刻さが増大するなか,インフラ整備計画・防災対策のために将来気候変動予測の重要性が増している.気候変動予測研究の核である全球気候モデルの改善が必須である.本研究では,波浪―全球気候結合モデルを開発し,気候システムへの波浪の働き・波及効果を解明することを目的としている. 本年度は,波浪の熱帯的低気圧特性に与える影響について評価することを目的に研究を実施した.全球大気気候モデルと波浪モデルを双方向結合し,波齢および波向と風向のずれを考慮した海面抵抗係数を導入し台風計算を実施した.過去,北西太平洋で発生した強い台風100個を対象として実験を行い,その平均的な性質を解析することにより系統的な台風への影響を評価した.結果,台風強度に対する波浪結合の平均的な影響はほとんど見られなかった.一方で台風経路に対して系統的な差がみられた.波浪結合計算では,非結合計算と比較して,日本付近の中緯度では,台風経路が平均的に1度程度東側にずれることがわかった.長期的な評価を行う気候モデルにおいて,本研究で見られた台風経路の系統的な差は気候変動影響評価に決定的な差異をもたらすと考えられる. また,波浪に加え簡易な海洋モデルを結合した大気気候・波浪・海洋結合モデルを開発した.これを用いて気候計算を実施し,短期間の大気海洋相互作用を考慮に入れることによる台風強度の気候スケールでの特性変化について評価した.スラブ海洋モデルおよび1次元混合層モデルを海洋モデルとして導入した.さらに波浪モデルにより大気最下層の海面粗度に波浪の効果を与えた.海洋モデルを結合したことにより,台風下の海洋表層における鉛直混合が表現されたため海水温の低下とこれに伴う大気側への熱供給の減少が起こり,強い台風の過度な発達を抑えることができ,観測に近い分布が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に大きな遅れがなく,全球気候モデルへの波浪導入効果を評価することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで波浪・簡易海洋・全球大気気候結合モデルの開発を進め,気候場への波浪と海洋場の結合の有無の影響を評価した.今後は,結合モデルにおける波浪を通した大気海洋相互作用の表現の高度化を進め,精度の高い全球気候モデルの開発を進める.また,開発を進めてきた結合モデルのフレームワークを用いて,長期気候計算を実施し,気候変動の沿岸災害への影響評価を実施する.
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