2020 Fiscal Year Research-status Report
Improving catchment scale stream habitat models based on a runoff analysis: focusing on flow regime and spatial resolution
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19K15101
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
糠澤 桂 宮崎大学, 工学部, 准教授 (20725642)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分布型流出モデル / 底生動物 / 種分布 / 機械学習 / ランダムフォレスト / ダム指標 / 流況改変 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
対象領域の宮崎県小丸川流域において構築されていた分布型流出モデルの精度向上を実施した.対象期間をそれまでの3年から10年間に延伸し(2010~2019),期間における流量再現性を表す指標であるNS係数は0.921~0.964と極めて高い再現性を得ることに成功した. 流域全体において,環境流況指標である水文改変指標(IHA)を計算した.さらに,水系内に存在するダム・堰や関連する発電所の放流量データを境界条件として用いて流出計算を行い,境界条件を考慮しない計算と比較して流況改変程度を定量化した.同様に,気候変動下の気温・降水量データ(全球気候モデル8種類,RCPシナリオ3種類,将来期間2種類)を入力値として用いた流出計算を実施して流況改変程度を定量化した.結果として,ダムは気候変動より多くの水文改変指標を改変させる一方,気候変動は支流や上流等のダムの影響が及ばない広範囲の流況を改変することが予測された.よって,水系内の総流路延長の多くを占める支流における生物多様性保全のためには,気候変動の影響緩和および適応のための環境保全施策を講じる必要性が示唆された. 2018年と2019年の11月に調査を実施した82地点のうち,25地点を対象に2020年11月に追加調査を実施した(総データ数=107).既往研究で提案された16種類のダム指標(e.g., ダム密度)を予測変数に,底生動物群集(計171分類群)の在/不在を目的変数に,機械学習の手法であるランダムフォレストにより分布予測モデルを構築した.結果として,ダム指標を予測変数に加えることで,掘潜型,匍匐型,滑行型の3生活型において有意な精度の向上が見られた(p<0.05).ダム指標の中でも,ダムに分断された河川区間の延長は,変数重要性が高い結果となった.これは,ダムによる分断が底生動物群集の分布に影響していることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象期間の流出解析は当初想定以上の再現精度を確保できており,さらにダムや気候変動の条件を加味した流出計算により,水系内の流況改変程度の定量化が実施できている.これは,研究課題である流況改変に着目した底生動物生息場モデルの構築およびその応用において極めて重要なプロセスと言え,この作業がほとんど終了していることは当初想定よりも進展していると言える.生息場モデルについては,小丸川水系において水・物質動態を大きく改変しているダム群の影響を無視することは出来ず,本年度はこの影響をモデル内に組み入れることに時間を要した.結果として,ダムによる影響を踏まえた底生動物分布予測が可能となり,どのダム指標が特に影響が大きいか示唆が得られている.計画書に詳細が記載された事項ではないものの,底生動物分布モデルを提案する上で重要な検討と言える.残された課題としては,流況指標を実際に生息場モデルに統合すること,そして高解像度の分布型モデルの構築である.前者については,前述したように流域全体で流況指標の計算は完了しているため,遂行に大きな困難は無いと予想される.後者については,予定を変更して3年目に実施することにしているため今年度の最重要課題と言える.以上より,総合的に進捗状況を考えると、その区分を「(2)おおむね順調に進展している」とすることが妥当と考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目には上流域を対象とした高解像度流出モデルの開発を進める.得られた高解像度の水理変数に加えてダム・気候変動による流況改変を生物予測モデルの予測変数として用いることで,物理的に得られた水文水理変数の予測能力をテストする.テストデータのために必要に応じて生物調査データを追加することも検討している.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により打ち合わせや成果発表の旅費に使用していない分が含まれる.また,解析・計算のために当初想定していたソフトや計算機等を導入していないことも一因である.解析を効率化・高度化するためのソフトや計算機等は適宜必要性を検討し購入を考える.また,実験試薬や成果発表のための旅費,論文出版費等に使用する予定である.
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Research Products
(8 results)
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[Book] 河川工学2020
Author(s)
風間聡, 小森大輔, 峠嘉哉, 糠澤桂, 横尾善之, 渡辺一也
Total Pages
194
Publisher
理工図書
ISBN
978-4-8446-0884-4
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