2020 Fiscal Year Research-status Report
Spatial economic modeling with endogenous agglomeration: A stochastic learning dynamics approach
Project/Area Number |
19K15108
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 実 京都大学, 経済研究所, 助教 (50793709)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 空間経済学 / 進化ゲーム理論 / 確率安定性 / ポテンシャルゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本応募課題の目的は,研究代表者がこれまで進化ゲーム理論分野の確率的進化ダイナミクスの理論にもとづき開発してきた,集積経済モデルの数理構造・理論特性を統一的に理解するための汎用的方法論を拡張し,モデル群を体系化することである.この目的を達成するため,2020年度は代表者がこれまで構築してきた方法論を集積理論モデルに対して適用し,その有効性を検証した.
2020年度は,主に単一空間スケール・単一立地主体のモデルの2次元空間における集積挙動に関する研究を遂行した.具体的には,Harris & Wilson の商業集積モデルをポテンシャル最大化問題として定式化し,ポテンシャルの大域最大化による均衡選択(確率安定性)と通常の決定論的な進化動学のもとでの均衡選択(局所安定性)とを比較した.まず局所安定性解析では多数の安定均衡が生じ,モデルの理論予測に曖昧さが残ることを明らかにした.次に,空間の対称性に基づいて代表的な均衡パターンを列挙する不変パターンの理論を応用することによって,2地点経済および2次元空間において発現しうる空間分布を特定し,それらの不変パターン上でポテンシャル関数を大域的に最大化することで大域安定な均衡状態を明らかにした.その結果,局所安定性に基づく均衡予測と比較して少数のパターンのみによって安定均衡解の遷移を表現しうること,また大域安定状態においてはより対称性の高いパターンが選択されやすいことを明らかにした.
また,2019年度に遂行した単一空間スケール・複数立地主体のモデル,具体的には,企業・消費者主体を考慮した代表的な都市経済学モデルであるFujita & Ogawa モデルについても,空間設定を拡張し,2次元空間における集積形態を明らかにした.この結果として,1次元空間で既に明らかになっている交通費用の基本的な影響が2次元空間においても頑健に成立することを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定において,2020年度は複数空間スケール・複数行動主体のモデルの分析に充てる予定であったが,計画を修正した.具体的には,複数空間スケールのモデルを解析することを念頭に,その基盤として単一空間スケール・単一主体モデルを具体例として,分析手法の開発を進めた.特に,確率安定性解析における不変パターンの理論の応用可能性を検討した.その結果,不変パターンの理論をポテンシャル最大化と組み合わせれば,これまで分析が困難と思われた2次元空間における集積挙動を明らかにできることが明らかになった.この方法は,目的としている複数空間スケール・複数行動主体のモデルの解析に応用可能であると期待される.以上により,研究計画を変更したものの,研究課題の主目的に対しては十分な研究成果を得たものと判断している.2021年度は当初の研究計画に立ち戻り,複数空間スケールのモデルについての研究を展開する予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,基本的には当初計画の通り,進化ゲーム理論に基づく確率的な都市・地域政策の経済評価のための方法論の構築を目指した理論分析を展開する.具体的には,複数空間スケール・単一主体のモデルに対する確率安定性解析および複数空間スケール・複数主体のモデルに対する確率安定性解析を実施し,確率的進化ダイナミクスに基づく集積経済モデル分析手法の拡張と,その有効性の検証を行う. なお,2020年度の研究によって,一般均衡モデルにおいては通常の集団ゲームの文脈におけるポテンシャル関数が存在せず,ある種の近似物を考える必要があることが明らかになりつつあるため,こうしたケースにおける方法論を開発するために時間を要する可能性がある.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は大きく分けて以下の2つである:(1) COVID-19パンデミックに伴う国内・国際出張予定の消失によって旅費が発生しなかった. (2) 当初予定していた計算機の購入を計算機性能と価格のバランスの観点・既に所有している計算資源の観点から見合わせ,2021年度に回すことにした.2021年度も国際出張は困難であることが予想されるが,研究計画上計算実験の必要性が増大するため,次年度使用額は主に計算機購入に充てる予定である.
|