2019 Fiscal Year Research-status Report
微生物共生系を活用した土壌吸着クロロエチレン類の革新的浄化手法の確立
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19K15131
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 美穂 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (90563734)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオレメディエーション / クロロエチレン類 / 土壌 / 吸着 / グルコース / 発酵 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物による分解能を利用したクロロエチレン類の浄化に関する研究は低コスト・低環境負荷などの観点から盛んに行われてきているが、浄化技術の普及には至っていない。その最大の原因は土壌粒子へ汚染物質がトラップされ、分解微生物が利用できないことにある。そこで本研究では、クロロエチレン類を完全分解・無毒化できる細菌Dehalococcoidesと共生可能なグルコース発酵微生物による土壌構造の変化と汚染物質の溶出促進効果で、土壌の浄化促進が可能であるかを検証し、新たな浄化手法を確立することを最終目的とする。 今年度は、6種類の土壌および3種類の微生物共生系を用いた培養試験を実施した。土壌は汚染サイトから採取した土壌4種類および市販の土壌2種類とし、これらをガンマ線滅菌した上で使用した。本試験ではクロロエチレン類存在下でのグルコース発酵とクロロエチレン類分解の最適条件を検討し、pHおよびDehalococcoidesの炭素源について、グルコース発酵とクロロエチレン類分解が共に生じる最適条件を明らかとした。一方で、今年度使用した土壌ではグルコース発酵に伴う土壌構造の変化は確認されなかった。また、同じ微生物共生系を用いても、土壌によりクロロエチレン類分解の可否や速度が異なることも確認した。クロロエチレン類の土壌粒子への吸着性の差がこの結果の一因であると推察される。また、培養試験では、グルコースの発酵産物と考えられるアルコール類が検出され、このデータは次年度実施計画しているグルコースの発酵産物の特定における基礎データとして使用する計画である。 今後は、今年度明らかになった最適条件下でグルコースの発酵によるクロロエチレン類の液相への溶出促進効果を定量的に評価し、これに伴うクロロエチレン類の分解促進効果を反応速度論的に解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養試験により、グルコース発酵とクロロエチレン類分解が共に生じる最適条件を明らかにすることができたため。また、グルコース発酵に伴う土壌構造の変化は必ずしも全ての土壌では生じないことを確認できたため。さらに、次年度の研究で行う発酵産物の特定や反応速度論的解析に必要な予備試験データを取得することが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
グルコース発酵に伴うクロロエチレン類の溶出効果によるクロロエチレン類の分解促進に重きを置き、研究を推進する。2020年度は、グルコースの発酵によるクロロエチレン類溶出促進効果の解析を行う。2019年度に実施した予備試験においてグルコースの発酵産物と推定されるアルコール類が検出されたので、このデータを基に発酵産物の高精度な特定と溶出促進効果の確認を行う。また、グルコースの発酵に伴うクロロエチレン類の分解促進効果を反応速度論的に解析する。本解析においては、テトラクロロエチレンからエチレンへの4段階の逐次反応を考慮した反応速度式の構築を行う必要があるため、当初の計画にはなかったがこの解析手法の構築も研究に加える。この反応速度式を用いてグルコースの発酵に伴うクロロエチレン類の分解促進効果を定量的に示すことことで、より実用性の高い評価が期待できる。
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Causes of Carryover |
研究情報収集を宿泊せずに日帰りで行い、旅費を抑えられたため。また、書籍の購入費用や試薬の購入費用が当初の計画よりも低く抑えられたため。
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