2020 Fiscal Year Research-status Report
筋かいと面材の併用壁を対象とした復元力特性モデルの開発と木造建物群モデルへの適用
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19K15133
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
汐満 将史 山形大学, 工学部, 助教 (30830129)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 木質構造 / 耐力壁 / 併用壁 / 復元力特性モデル / 建物群モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、筋かいと構造用合板、およびこれらを併用した耐力壁の静的加力実験を行い、併用壁の復元力特性について検証した。具体的には、入力変位を一方向載荷・正負交番繰り返し載荷・任意の負側変形の後正側への引切、の3種類行うことで、これらの耐力壁の標準的な性能や、片側の変形が逆側の性能に及ぼす影響を調べた。 まず、併用壁と、筋かい・構造用合板・軸組みを加算したもの(以下、単体加算)の性能を比較し、構造用合板による筋かいの座屈拘束の影響を調べた。その結果、約0.012radから併用壁の層せん断力が、単体加算の1.1~1.2倍程度大きくなった。したがって、既往研究でも指摘されている、構造用合板が筋かいの座屈を拘束することで、併用壁の層せん断力が上昇することが確認できた。 次に、併用壁について、任意の負側変形後正側へ引切加力したものと、一方向載荷の試験結果を比較し、片側の変形が逆側の性能に及ぼす影響を調べた。筋かいによる正側の層せん断力を見ると、負側変形1/50・1/30radは、一方向載荷と概ね一致したが、負側変形が1/25radより大きくなると、一方向載荷よりも層せん断力が大きく低下した。この結果からは、変形が1/25rad以上生じると、逆側の性能に影響が生じる様に見える。しかし、負側変形1/30rad試験体の、筋かいのヤング係数を見ると、その他の試験体のヤング係数の平均よりも約1.5倍大きかった。そこで、負側変形1/30rad試験体のヤング係数に、他の試験体の平均値を用いて層せん断力を再度算出した所、一方向載荷・負側変形1/50rad試験体よりも大きく低下した。これは、1/30radを超えると、片側の変形によって構造用合板が損傷を受け、筋かいの座屈拘束が緩くなったためと考えられる。よって、併用壁の筋かいは、1/30rad程度の変形が生じると、逆側の性能に影響が生じると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度行った実験により、併用壁の復元力特性、特に片側の変形が逆側の性能に及ぼす影響ついて検証することができた。現時点では、併用壁の筋かいについてのみで、併用壁全体としての性能に関してはこれからであるが、併用壁の中で筋かいがどのような挙動を示すのかを明らかにすることができた点は大きな進展と言え、順調に進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度行った実験結果の分析を進め、併用壁における片側の変形が逆側の性能に及ぼす影響を、さらに明らかにする。そして、この結果をもとに、併用壁を対象とした復元力特性モデルを開発し、精度を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であった実験に必要な工具類について、より安価で性能も劣らない製品がありそちらを購入したことで、余剰金が生じた。今年度はPCによる解析を行うため、メモリーといったPCの性能を増強する物品を追加購入する予定である。
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