2020 Fiscal Year Research-status Report
形状記憶合金による大空間ラチスシェル屋根の地震応答制御および残留変形対策
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19K15141
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
箕輪 健一 日本工業大学, 建築学部, 准教授 (70733830)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形状記憶合金 / 超弾性合金 / 地震応答制御 / 減衰性能 / アーチ構造物 / 振動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,当初から予定していた研究計画に基づき,学校体育館等に多用されるラチスシェル屋根を対象構造物とする準備段階として,一般的なラチスシェル屋根の基本形状であるアーチ構造物を対象に形状記憶合金による制振効果を分析した。まず,制振効果の高い形状記憶合金の配置位置等を明らかにするために時刻歴応答解析を行った。次に,時刻歴応答解析において対象モデルとしたアーチ構造の縮小模型を用いた振動実験を行い,形状記憶合金を設置していない試験体との比較や,形状記憶合金の配置位置を変えた場合による固有振動数や自由振動時の減衰定数を実測することで,形状記憶合金による制振効果を確認した。これらの結果,形状記憶合金の降伏に伴うエネルギー吸収により,構造物の応答量が増加するに従い減衰定数が増加することを確認するとともに,屋根架構の下部構造内に制振部材として形状記憶合金を配置することで比較的大きな減衰性能を得られることを明らかにした。 また,上記において研究の対象としたアーチ構造物に対する制振効果の知見に基づき,実大規模の二層円筒ラチスシェル屋根の数値モデルを対象に,形状記憶合金を制振部材として用いた際の地震時における制振効果の検討を進めている。そこでは,制振部材の配置位置などによる制振効果への影響の分析を行った上で,形状記憶合金と粘性ダンパーを制振部材として併用することで非常に高い制振効果を発揮できる可能性を見いだした。これまでの知見をまとめることで,形状記憶合金と粘性ダンパーを併用するラチスシェル屋根の特性にあった制振方法の確立を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ラチスシェル屋根を対象構造物とした際,数値解析の計算コストが高く検討に時間を要することもあり,現在までの分析では,形状記憶合金による制振効果を十分に発揮できる方法を提示できたとは言いがたく,その点に関する検討が遅れている。また,アーチ構造物の縮小模型を用いた振動実験を行った際,昨年度に行った重層構造物の縮小模型を用いた振動実験で得られた減衰性能ほどの効果は得られていなく,今後,制振部材の配置位置の見直し等,制振方法を改善し大きな減衰性能を得られる制振手法を見直す必要があると思われる。 さらに,研究の進捗に従い,振動実験による結果を数値解析により精度良く捉えられていないという問題点が明らかとなった。これは,制振部材のモデル化方法に原因があると考えられ,数値解析による制振効果の検討を進めるにあたり,制振部材のモデル化方法を再検討し,数値解析の精度を向上させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,超弾性合金を制振部材として用いた際の部材モデルを,部材レベルでの繰り返し載荷実験を行った上で再構築し,数値解析の精度を高める予定である。そして,ラチスシェル屋根を対象とした際の制振効果を高めるために,現状までで把握した性能をもとに検討パラメータを絞り詳細な分析を進める予定である。 また同時に,形状記憶合金による形状回復効果を確認するために,載荷と除荷を繰り返す実験を行う。この載荷除荷実験においても,振動実験と同様に,形状記憶合金を設置していない試験体における実験も行うことで,その形状記憶合金による効果を明確にする。また,解析による実験の再現性を高めた上で,知見の修正を重ねながら結果を纏める予定である。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額」は必要に応じた執行分の端数として生じたものである。 研究計画に大きな変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく。
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