2020 Fiscal Year Research-status Report
現代日本の庁舎建築における環境性能目標及び環境配慮手法
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19K15147
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
藤原 紀沙 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 助教 (10821358)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 庁舎建築 / 環境配慮 / 環境性能 / 建替え |
Outline of Annual Research Achievements |
各自治体の庁舎の建替えが相次ぐなかで環境性能の向上が求められている。本研究では、異なる地域の複数の新庁舎建築を対象とし、「自治体の求める環境性能」、「設計者時の環境性能目標及び環境配慮手法の傾向」、そして「環境性能目標と環境配慮手法についての計画時と竣工時の差異や導入手法の効果」を明らかにすることを目的とする。 2019年度は、「自治体の求める環境性能」、「設計者時の環境性能目標及び環境配慮手法の傾向」に関して、新庁舎建築の環境配慮手法及び環境性能を、計画時と竣工時とで比較分類した。 2020年度については、「環境性能目標と環境配慮手法についての計画時と竣工時の差異や導入手法の効果」に関して、特に、環境配慮手法建築的手法についての導入効果を、新庁舎建築の竣工時の空間構成の特徴(敷地内及び執務室の配置)から検討した。 平成27 年以降に竣工した地方自治体の行政機能を持つ庁舎建築計209 件より、ウェブ上で図面等の情報が入手できた53 件を対象として、敷地内及び執務室の配置について、図面の分析を行い、以下を明らかにした。1) 敷地内に北面や南面に広場を設け、その他の部分に新庁舎建物を配置する傾向がみられた。建物形状は長方形、特に東西軸が多くみられた。2) 執務室をインテリアゾーンや北側に配置する傾向がみられた。執務室の開口率の中央値は20%であり、1 面採光が多くみられた。 これらの成果は、複数地域の最新庁舎建築における空間的特徴を明らかにするものであり、今後の庁舎建替えの際の自治体側及び設計者の指針や設計方針決定における一助となるものと考えられる。 2019年度の成果の一部は、2020年度日本建築学会大会学術講演会および令和2年度空気調和・衛生工学会大会において発表した。さらに、2021年度日本建築学会大会学術講演会、令和3年度空気調和・衛生工学会大会において発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の状況や世界的な感染症拡大の中、取り組む順番を変更しつつ取り組んでいる。プロポーザルコンペティション情報のウェブ上での開示終了等資料収集が難航したことから、基本計画における環境性能目標および手法、ならびに竣工後の建物における環境性能および手法の分析を優先して行っている。今後、不足資料の請求については自治体に対して行う予定である。また、庁舎の現地調査については、2019年度に研究機関の所在する栃木県内で一部実施したが、コロナ感染症の拡大のため、図面などの資料による調査を実施している状況である。 2019年度は、新庁舎建築の環境配慮手法及び環境性能について、資料調査とアンケート調査を行い、資料編を作成するとともに、環境性能目標、環境配慮手法及び、計画時と実態の差異を調査した。調査から、環境配慮手法は概ね自治体の計画通り導入されており、経済性が高く、導入が比較的容易な手法を導入する傾向、建物自体の性能を向上させる手法と高性能設備をバランスよく用いる傾向が明らかになった。また、環境性能目標を計画時から掲げた事例は約4割であったが、そのうちの9割でCASBEEが用いられていた。性能目標と一次消費エネルギーとの対応をみると、消費エネルギーの小さい庁舎で多く活用され、目標達成されている傾向がみられた。 2020年度については、環境配慮手法建築的手法についての導入効果について、資料調査を行い、資料編を作成するとともに、新庁舎建築の竣工時の空間構成の特徴(敷地内及び執務室の配置)を調査した。敷地内に北面や南面に広場を設け、その他の部分に新庁舎建物を配置する傾向がみられた。建物形状は長方形、特に東西軸が多くみられた。また、執務室については、インテリアゾーンや北側に配置する傾向がみられた。これらの空間の特徴をもとに効果検証に用いるモデルの作成を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの調査で明らかになった、環境配慮手法と環境性能について、個々の建物形状や空間計画との関係を分析することで、環境性能への影響を検討する。自治体の公開資料から明らかにした、手法や地域ごとの空間構成の傾向から、複数の庁舎建築モデルを作成する。これらの庁舎建築モデルについて、日本各地の代表的な8地域の気候下での環境負荷及び室内環境パラメーター(温湿度分布、風速など)を計算することで、それぞれの地域の気候で評価することにより、それぞれの気候に適した形状及び環境性能を明らかにする。さらに設計者時の環境性能目標及び環境配慮手法の傾向について、自治体や設計者にアンケートを実施したり、コンペティション応募や基本設計時の資料開示を求めたりすることによって、調査を実施する予定である。 現地調査については、コロナ禍の状況が2021年度も継続するようであれば実施せず、資料調査に替える予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、旅費の使用計画を変更したことが大きい。 2020年度については、2019年の計画時点は現地調査を中心に行う予定であったが、コロナ禍のなかでは実施できなかった。国際会議での発表も予定していたが、コロナ禍により予定していた国際学会への参加をとりやめた。2020年度は、モデルを用いた地域の気候に応じた条件のパラメトリックスタディを行うための機器やソフトの準備を行った。 2021年度についても社会情勢から旅費としての使用が難しいと予想されるため、情報の開示や郵送に対しての費用を確保するとともに、効果検証にかかる機器やソフトなどの購入にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)