2019 Fiscal Year Research-status Report
温度差換気を採用する高層建物の自然換気口開閉制御法-新たな開放率制御の構築-
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19K15157
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
下ノ薗 慧 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 建築研究本部建築性能試験センター, 研究職員 (10781453)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自然換気 / 温度差換気 / 中性帯位置 / 自然換気量制御 / 開放率操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は自然換気制御を評価できる実用可能な熱・換気平衡計算を提案し、自然換気制御を導入するオフィスビルの性能評価を行うことである。今年度の成果は以下の3点である。 ①自然換気利用建物の実態調査:自然換気利用建物を89物件調査し、温度差換気の経路、自然換気専用のチムニー(自然換気専用の竪穴空間)の方位・位置、自然換気口有効開口面積などに関するデータを蓄積した。近年では10層程度の建物でチムニーを自然換気の主経路としている事例が多いことが分かった。これら蓄積したデータをもとに、熱・換気平衡計算用の計算モデルを構築した。 ②自然換気時のアトリウムの温度実測:北海道立総合研究機構建築研究本部庁舎(北海道旭川市)にて、執務室温度、竪穴空間の上下温度分布、自然換気口前後の差圧を約1カ月に亘り測定した。本庁舎の計算建物モデルを作成し、差圧の計算を行ったところ差圧の実測値と概ね整合することを確認した。 ③開放率操作を組込んだ熱・換気平衡計算法の提案:自然換気による過剰冷却を防止するために開放率操作という概念を提案した。開放率操作とは自然換気口の面積、自然換気口の開度、自然換気口の開放時間を調整することを指し、下限室温設定値以上を保つことができる。開放率操作を行うことで低温環境の発生を防止できるほか、特に温度差換気を利用する建物において中性帯位置の上昇や各階自然換気量の平準化にもつながることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標として掲げていた、①自然換気利用建物の実態調査、②自然換気時の竪穴空間の温度実測、③開放率操作を組込んだ熱・換気平衡計算法の提案まで至った。特に、開放率操作を組込んだ熱・換気平衡計算法は概ね自然換気口の開閉ハンチングなどの諸問題も発生しないことを確認しており、概ね完成していることから順調に進展していると言える。また、自然換気時の竪穴空間の温度実測で得られた結果は竪穴空間温度の計算法構築につながるという点でも順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は以下の2点に着眼して進める予定である。 ①自然換気時の竪穴空間内温度の計算法構築:自然換気制御の効果を評価する上で、自然換気量を可能な限り正確に算出することは不可欠である。近年、自然換気用の竪穴空間を設け、温度差換気により、自然換気量を安定的に確保するという手法が多く採用されている。自然換気量は竪穴空間内温度と外気温度の差に依存するため、竪穴空間内温度を可能な限り再現する計算法が求められる。当該年度の研究により、自然換気時の竪穴空間の温度実測にて竪穴空間の上下温度分布のデータが得られた。本実測とCFD(数値流体解析)を用い、簡易かつ十分な精度で竪穴空間内温度を計算するための質点分割法などを検討する予定である。 ②開放率操作を実現するための手法提案:開放率操作は自然換気口の面積、自然換気口の開度、自然換気口の開放時間を調整することを指すが、時々刻々と開放率を操作することは現実的ではない。そこで、既存の制御方法(自然換気許可条件の設定)でも低温環境の発生を防止できる手法を提案する。具体的には階ごとの自然換気許可条件を設定することを予定しており、地域、建物階数などのパラメトリック解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延の影響で3月分の旅費を使用しなくなったため、約8万円を繰越す。
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