2019 Fiscal Year Research-status Report
アジア蒸暑地域における建築専門工事に従事する外国籍労働者の実態
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19K15173
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐々木 留美子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任助教 (20795314)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 出稼ぎ労働者 / ミャンマー / 建設技能 / 就労 / 帰国後 / 外国人特定技能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジア蒸暑地域の大規模建築工事における、設備・建築外皮専門工事の労働体制および外国籍の出稼ぎ労働者(いずれ母国に 帰る可能性が高い労働者)の域内移動による技術伝播メカニズムを解明することを目的としている。これを明らかにすることで、同地域全体における専門工事に従事する外国籍労働者の能力向上の為の方策を検討する。 近年、アジア蒸暑地域では建設需要増加に伴う労働者不足から、域内の外国籍労働者の雇用が進む中で、建築の実性能を決定づける施工業務に従事する労働者に限っては、低所得国からの外国籍の出稼ぎ労働者(いずれ母国に帰る可能性が高い労働者)に依存する状況である。 2019年度は、労働者送出し及び受入れに関する比較研究の下準備として、日本において運用が開始した「外国人特定技能在留資格」に着目し、現状の課題等の把握を行った。また、アジア蒸暑地域での大規模建築プロジェクトにむけ、主に労働者を送り出す低所得国としてミャンマーを事例に、国内での建設労働者教育の概要および海外における就労の渡航前訓練や帰国後の就労の実態を明らかにした。ミャンマー国内では、専門技能の資格化に伴い、複数の訓練センターが設備専門工事に関する技能訓練を実施していた。また周辺のASEAN諸国の技能資格に互換性を持たせることで国内の技能者レベル向上に向けた積極的取組が見られた。一方で、ミャンマー国外への建設労働力の流出が加速している現状において、流出した労働者が帰国後に母国へもたらすものは外資に限られ、海外の経験による技能が活かされた例は少ない。将来的な建設産業の国際競争力向上に寄与する機会とならず、むしろ労働力を搾取され続ける負の循環の連鎖となる懸念があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、主に法的枠組みの整理による社会システムの概観把握を行い、次年度からの現地調査の準備を行うことを予定としていた。外国籍労働者の受け入れに関する法的枠組みおよび社会システムの概観を把握する目的で、本年度は、日本において運用が開始した「外国人特定技能在留資格」に関する実態及び課題の把握を行った。また次年度からの本格的な現地調査にむけ、調査内容の検討および調査の実現可能性を確認する目的で、アジア蒸暑地域の建設労働者の送り出し国として機能しているミャンマーにおいて現地調査を実施した。 ミャンマーの建設労働者に関する知見を有すると想定される組織として、技能者訓練を行う組織および実務プロジェクトを遂行する建設業者へヒアリング調査を実施した。調査対象組織はミャンマー建設業協会(Myanmar Construction Entrepreneurs Association)、技能訓練センターヤンキン校(Skills Training Centre -Yankin)、技能訓練センターマンダレー校(Skills Training Centre - Mandalay)、建設省訓練センター(Thuwunna Training Center)、総合建設業者および建設施工業者の六組織である。いずれも組織の代表者もしくは組織概要に精通する者が回答した。調査項目は、最終年度に予定するアンケート調査の調査項目の検討の目的で、建設労働者教育の概要、海外への出稼ぎ労働者の渡航前教育、主な受け入れ国、出稼ぎ前後の就労実態とした。国内での建設労働者教育の概要および海外における就労の渡航前訓練や帰国後の就労の実態を明らかにするとともに、将来的に出稼ぎ労働者へのアンケート調査を実施するにあたり、労働移民局の担当者情報などを入手した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、出稼ぎ労働者の主な受入国であるタイやマレーシア、シンガポールにおいて、外国籍労働者の就労実態を調査する必要があるといえる。 今後は、蒸暑地域の大規模建築工事における工事事業者(設備および外皮を想定)の労働体制および域内の労働者移動による技術伝播メカニズムを解明することを目的として研究を遂行する。 2020年度および2021年度は、タイやマレーシア、シンガポールにおいて、外国籍労働者の労働体制に関するフィールド調査および分析を行う予定である。工事関係者への労働者体制に関するインタビュー調査および文献収集を行う。 収集文献は、プロジェクト概要(建築物用途、規模等)・関係者データ(発注者 、外皮・設備設計者、元請施工管理者、専門設備施工者、専門外皮施工者、プロジェクトマネジャー、コンストラクションマネジャー等)・建 築概要(設計図、仕様等)・工事概要(工事期間、工程表等)のプロジェクト関連資料とする。更に、労働者体制や技能訓練制度、各工事現場 での取組や問題点に関し、工事元請業者、建築外皮専門業者、設備工事専門業者へインタビュー調査を行う。また、2021年度~2022年度に、低所得国(ミャンマー・ラオスを想定)から新興国(タイを想定)へ出稼ぎにより専門工事業務を経験した母国の労働者へのアンケート調査を行うにあたり、送り出し国としてラオスでの調査可能性を検討する。 海外渡航が困難な状況な場合に備え、各国の法規へのウェブ上のアクセスを行うとともに、各国において研究協力者の協力を仰げるよう、依頼を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は研究対象国での現地調査の回数が1回に留まり、労働者送り出し国側へのインタビュー調査のみ行った。次年度は、受け入れ国における現地調査および受け入れ国の法制度等の文献調査を行うにあたり、旅費および物品費の使用が必要となる。
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Research Products
(1 results)