2021 Fiscal Year Research-status Report
アジア蒸暑地域における建築専門工事に従事する外国籍労働者の実態
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19K15173
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 留美子 東北工業大学, 建築学部, 講師 (20795314)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 技能実習 / 出稼ぎ就労 / 帰国後 / 送出し国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジア蒸暑地域の大規模建築工事における外国籍の出稼ぎ労働者の労働体制や域内移動による技術伝播メカニズムを解明することを目的としている。 研究初年度(2019年度)は、アジア蒸暑地域内で主に労働者を送り出すミャンマーでの現地調査を通し労働者送出しの現状把握を行った。建設労働者教育の概要や渡航前訓練、帰国後の就労の実態を明らかにするとともに、本研究の最終年度に実施する技能者間の知識のネットワーク分析にかかる調査準備を行った。二年目となる2020年度は、受入れ国で(シンガポールやタイ等)の現地調査を通し出稼ぎ時の建設就労に焦点を当てる計画であったが、コロナ禍における海外渡航が困難となり、ウェブ等で情報公開が進むシンガポールを中心に建設関連法規のレビューや、送出しの要求水準を調査分析した。三年目となる2021年度は、前年度に実施した調査の研究報告を日本建築学会第36回建築生産シンポジウムにおいて実施した。また前年度から未遂行であった現地調査(受け入れ国および送出し国)は、依然続くコロナ禍による渡航制限および所属大学の海外出張禁止令により、未実施となった。 このため調査可能な日本国内での建設業の外国人受入に焦点をあて、技能実習生を対象とした日本国内の就業の実態や帰国後のキャリアに関し、技能実習生、受入企業、監理団体への調査研究を遂行した。特定技能への移行については、技能実習生の結婚などのライフプランや企業の受入への経済的負担が弊害になっている。一方で帰国後のキャリア形成については、現地の建築生産システムおよび職能との相違から課題も多いことが明らかになった。 また、アジア蒸暑地域での建設労働者の周辺地域からの受入国となるタイについて、外国人就労の法規の整理や現地に進出する日系企業への遠隔によるオンラインでのインタビュー調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は主に現地調査により形成される研究計画となっている。2020年度および2021年度は、外国籍労働者の労働体制に関するフィールド調査分析を予定していたが、依然継続するコロナ禍での渡航制限および所属大学の海外出張禁止令により、現地での工事関係者への労働者体制に関するインタビュー調査および文献収集は叶わなかった。 日本国内において実施可能な研究として、国内での外国籍労働者として技能実習生に焦点を当て、就業実態やキャリアプランなどの調査を実施したことにより、本来のアジア蒸暑地域の調査研究の比較対象となる知見は得られた。またタイに進出する日系企業への遠隔でのインタビュー調査を遂行することで、タイでの外国籍労働者の就労の実態把握につとめたが、インタビュー件数は2件に留まることから、本研究本来の計画に基づく成果には多いに遅れをとっている現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、蒸暑地域の大規模建築工事における工事事業者(設備および外皮を想定)の労働体制および域内の労働者移動による技術伝播メカニズムを解明することを目的として研究を遂行する。 次年度は研究の最終年度となる。低所得国の送出し国として準備したミャンマーは政情不安となり、また昨年度の渡航制限からラオスでの調査準備は進まなかった。これにより、ラオスでの調査遂行およびシンガポールへの送出し国であるバングラデシュでの調査遂行を予定し、渡航可能となる地域における調査を実行する。 また、出稼ぎ労働者の主な受入国であるタイやシンガポールにおいて、外国籍労働者の就労実態を調査する。労働者体制や技能訓練制度、各工事現場での取組や問題点に関し、工事元請業者、建築外皮専門業者、設備工事専門業者へインタビュー調査を行う。海外渡航が困難な状況な場合に備え、各国の法規へのウェブ上のアクセスを行うとともに、各国において研究協力者の協力を仰げるよう、継続的に依頼を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は、東南アジア諸国における現地調査によるデータ収集を主軸として計画されている。具体的には、支出は海外渡航および現地調査による旅費や人件費、物品費を想定している。 しかし2020年度および2021年度は疾病(コロナ)が蔓延したことによる当該国での入国制限や、所属大学での海外出張禁止令があり、海外調査を実施していない。 これにより、当初の計画と大幅に使用額が乖離している。 次年度以降は、海外出張が認められ次第、渡航における旅費や人件費、物品費として使用予定である。
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