2020 Fiscal Year Research-status Report
静岡浅間神社江戸後期再建史料に見る建築普請活動に関する研究
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19K15191
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
新妻 淳子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (20814172)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 静岡浅間神社 / 建築普請 / 江戸後期 / 再建 / 日記 / 駿府 / 工匠 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年度目は、静岡浅間神社に伝来する60余年におよぶ現場記録『御再建場所日記』の翻刻作業と史料分析を中心に研究を進めた。特に建築技術的な事項については静岡浅間神社及び保存修理工事現場の協力を得て建造物調査を実施した(①~⑤)。 ①『御再建場所日記』の翻刻作業を進めた。(初年度:文化元~3年(4冊)、2年度:文化4~9年(5冊))②『御再建場所日記』60冊から天気・災害を抽出し、一覧表を作成した。③現在進行している神部神社・浅間神社(以下両社)拝殿の保存修理工事に先行して『御再建場所日記』及び仕様帳等を分析し、両社拝殿再建工程についての研究成果をまとめた。(日本建築学会大会にて発表予定)④静岡浅間神社及び静岡浅間神社総合研究会の協力を得て、建造物調査2回、研究会2回を実施した。⑤神部神社・浅間神社回廊の再建工程について日本建築学会大会にて発表した。 『御再建場所日記』と仕様帳類を併せて分析することにより両社拝殿の再建工程、建築仕様、資材調達、工匠の出入、建築技術等、江戸後期駿府における建築普請活動の実態解明を進めた。また『御再建場所日記』60冊から天気・災害の抽出作業を終えたことで、駿府における江戸後期の天候が判明し、静岡浅間神社の災害履歴も明らかになった。久能山東照宮及び駿府城が被害を受けた天保12年(1841)の天保久能山地震や嘉永7年(1854)の安政東海地震の際、『御再建場所日記』に地震の記載はあるが、静岡浅間神社社殿の被害は認められなかった。引き続き建造物・史料・古図面の調査を併せて実施し、江戸後期の駿府における建築普請技術について検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を推進するための史料調査及び写真撮影は実施することが出来なかったが、すでに写真撮影が完了している『御再建場所日記』の翻刻作業を重点的に行ない、当初の計画以上に進んでいる。それにより『御再建場所日記』をベースとした静岡浅間神社江戸後期再建に関する史料分析が進展し、両社拝殿については、保存修理工事着手前に史料から得られる江戸後期再建の実態把握を目指している。『御再建場所日記』60冊から天気・災害情報を抽出した一覧表は、江戸後期駿府の天候と静岡浅間神社の災害に関わるインデックスとして使用可能である。 駿府城下町の基礎構造を解明するため、歴史学と民俗学の専門家の協力を得て研究を推進しているが、史料調査及び研究会の開催が容易ではなく、研究会は2回のみの実施であった。初年度同様、研究成果を一般市民に発表する静岡浅間神社総合調査研究報告会(3月)は開催できなかったため、一般への研究報告の機会は得れなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
『御再建場所日記』の翻刻・史料分析を推進し、両社拝殿の保存修理工事との連携を図る。「江戸後期再建史料」の内、仕様帳・古絵図・古図面に着目した調査及び写真撮影を実施したい。一般市民に研究成果を発表する静岡浅間神社総合調査研究報告会を実現させる。
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Causes of Carryover |
計画通りの現地調査及び研究会の開催が難しく、予定していた一般市民対象の静岡浅間神社総合調査研究報告会を中止せざるを得なかった。そのため旅費及び謝金が減額となった。 次年度、本研究をさらに推進させるための史料翻刻料と古絵図・古図面撮影料、静岡浅間神社総合調査研究報告会の実施に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)