2020 Fiscal Year Research-status Report
ポスト植民地としての戦後台湾建築研究─建築生産システムから見る本省人建築家の活動
Project/Area Number |
19K15195
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市川 紘司 東北大学, 工学研究科, 助教 (60757855)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大阪万博 / 中華民国館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ポストコロニアリズム研究の視座からの日本植民地建築研究として、戦後台湾における本省人建築家の活動を、本省人建築諸主体によって構成される建築生産システムの一部として捉えた上で、植民地期の産業構造や技術的蓄積の継承・変形・断絶という観点からヒアリング調査や文献調査によって検証するものである。昨年度は、台湾国家図書館や国立台湾図書館などで、戦後台湾における建築産業に関する基礎的調査を実施し、戦前植民地期から戦後にかけて建設会社や工務店がどのように分布していたのかを把握した。 当該年度は、当初は台湾現地での調査を計画していたものの、コロナ禍の影響によって遂行が不可能となったこと、また次年度以降も出張調査が困難であることを想定して、日本国内で調査遂行の可能な代替の主題を検討し、1970年の日本万国博覧会(大阪万博)の中華民国館に関する研究をおこなった。大阪府日本万博記念公園事務所にアーカイヴされている関連資料一式を調査し、華人建築家イオ・ミン・ペイが台湾の建築家らと共同設計した中華民国館の設計上の特徴、設計から建設までのプロセス、及び万博期間中における展示内容などを明らかにした。この調査から、大阪万博の中華民国館が意図的に中国の伝統建築の意匠を避けたモダニズムでデザインされたこと、他方で展示内容は台湾島に関わるものではなく中国史に関わるものであったことなどが了解された。 また、同資料調査によって、大阪万博閉幕後には1972年に「国交正常化」を果たした中華人民共和国が万博記念公園にて大規模な展覧会を開催していたことも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は台湾現地での調査研究を柱とする計画であったため、コロナ禍の影響を大きく被ることになり、当初の研究計画の遂行が困難を極めている。ただし、代替となる研究対象を日本国内で見定め、その調査を進めている。当該年度には台湾現地で予定していたインタビュー調査を、当地の研究協力者の協力のもとでオンラインにて実施することを企図したが、大阪にて開始した資料調査の取り纏めたが遅れたため、次年度に持ち越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究第3年度は、当初当該年度に予定していた戦後台湾建築関係者へのヒアリング調査をオンラインにて実施する。その成果と、当該年度に大阪にて実施した資料調査の成果を合わせて論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
研究計画において計画していたヒアリング調査がコロナ禍の影響を被って実施できなかったため、これに関わる人件費・謝金を残すことになった。次年度にはオンラインを通じたヒアリング調査を実施予定であり、その調査において当該剰余予算を使用する予定である。
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