2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15196
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡邊 大志 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60632114)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 港湾 / 港湾都市 / インフラ / 大阪港 / 築港 / 倉庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に続き大阪港を中心に文献・資料収集を行いながら、その内容の精査を行った。その結果として、大阪港の近代化過程は時代によって大きく四つに分けて考えられることを明らかにした。一つ目は安治川の浚渫工事による天保山の造成を皮切りとして大正期まで続いた河川計画としての築港期である。この時期は、主に東京港を舞台としてその方法と仕組みだけが明治政府を中心に考えられたモデルを大阪港において適用とした時代である。近代港湾制度の整備とともに、本願寺による御堂筋を中心とした伝統的な大阪のグリッド都市との併存の基本的な考え方が決定づけられた時期でもある。第二に、20世紀初頭における民間埠頭建設が続いた時期がある。この時期は、住友倉庫を代表として阪神経済圏を牽引する民間倉庫会社が自治体に変わって港湾公共事業を請け負った時期であり、現在見られる主たる大阪港の桟橋の基本形が構えられた時期である。第三に、戦前から戦後にかけて南港の建設を中心に大阪港全体が近代化されていった時期がある。この時期に概ね現在の大阪港の概観は整えられた。これらの動きは1970年代のコンテナ埠頭の到来の前で終わることになる。第四は1970年代以降、コンテナライゼーションによる物流インフラを港の主力として構えていった時期である。これらの構造は基本的に現代にまで続くが、そのほとんどが東京港において大井埠頭建設の過程で整備された法律や港湾運用を大阪にも適用したものであり、特筆すべきものはあまり見当たらない。以上を要するに、大阪港の近代化過程にみる都市史上の価値は、第一期から第三期までにあるものと推定される。本年度は、主に文献などの資料からこれらのことを読み解くことを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は概要に記した成果があがっているものの、コロナ禍による影響によって当初の全体計画から遅れが出ている。 その理由は、度重なる非常事態宣言や主たる対象地である大阪と神戸が蔓延防止法の対象となり、また、早稲田大学の研究出張自粛要請もあり、現地調査のための出張が実質的に不可能であったことが主な原因である。この一年間で事態が改善するのを待ちながら文献資料を中心に作業を進めて来たが、やはり現地調査はかかせないものであり、必要な研究出張の再開を念頭に作業を進めている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コロナ禍の状況にもよるが、当初予定していた現地調査の段階を取り戻しながら、引き続き文献資料の精査を継続し、論文他のアウトプットへ繋げていく作業に力点を置いていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、予定していた現地調査のための研究出張を実施することが困難であったため。次年度も少なくとも上半期は状況の改善が見込めないことから、最大限の工夫をして現地調査を実行し、予定した研究行程に追いつくように考えている。
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Research Products
(2 results)