2021 Fiscal Year Research-status Report
明治期北海道移住者による農家建築の成立・変容にみる母村文化の影響に関する研究
Project/Area Number |
19K15199
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Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
鈴木 明世 北海道博物館, 研究部, 研究職員 (30823942)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民家 / 農家建築 / 北海道 / 富山県 / 新潟県 / 建築資料 / アーカイブズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間における目標の一つに、明治期に北海道に移住した人々の住宅が、郷里の文化的影響を受け、どのように変化してきたかを見出すことを大きな目的としている。2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当初予定の北陸地方への農家建築の調査が実施できなかったため、移住者の事例として、ニシン漁経営を中心とした生業で、北海道で発展した旧青山家について調査を行った。青山家の建物は、北海道開拓の村に旧青山家漁家住宅としてニシン番屋である母屋(旧母屋が焼失し大正8年に再建されたもの)とその付属屋が移築復原されている。また、旧所在地である北海道小樽市には、青山家が建てた旧青山別邸があり、郷里の山形県遊佐町には旧青山本邸が現在も残されている。 2021年度は、遊佐町教育委員会が管理することもあり旧青山本邸への現地調査を行うことができた。ここでは、主に、北海道での生活の際に、郷里の本邸とどのような関係を築いていたかを確認するものであったが、本邸に保管されていた北海道の青山家との密接なやりとりを示す書簡や電報の記録や、当主の日記帳などから、北海道の母屋の建設時期や資材・職人の斡旋等の状況について確認ことができた。また、遊佐町での成果を参考に、北海道博物館に所蔵されている青山家文書の資料調査を行い、家計簿や書簡・電報等の記録をもとに、焼失から再建に当たってのおおよその経緯を把握できた。これは、北海道博物館の収蔵資料が建築史学へ活用した事例となり、当初予定の旧樋口家農家住宅や、旧菊田家農家住宅でも同様の手法を当てはめることが可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当初予定をしていた現地調査が実施できなかったため、次年度に調査が繰り越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
①2022年度は対象建造物の郷里である富山県、新潟県などの北陸地方を中心に、明治以降の住宅の形式の歴史的な変遷について集落形態などの調査や、個別の建物の変遷について聞き取り調査等を実施する。また、同地域からの移住者による住宅の北海道内における歴史的変遷過程との比較を行う予定である。さらに、明治期の農家においては、養蚕業を実施していた場合も多いため、建物と産業のあり方についても、郷里と移住先との比較検討を行う。また、北海道博物館収蔵資料なども調査対象とし、担当学芸員と連携を取った調査を行う。調査の成果については、北海道博物館研究紀要等での成果報告を行う予定である。 ③2020年度に作成したデータベースにより多様な情報を入力し、研究対象の建造物情報を集約するプラットフォームとすることを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当初予定していた現地調査を実施しなかったため、研究期間延長を行った。そのため、当該年度での調査費用および研究成果をまとめるために係る諸費用の支出が無かったためである。
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Research Products
(2 results)