2019 Fiscal Year Research-status Report
山岳信仰にねざす山小屋建築の形式と形成に関する史的研究
Project/Area Number |
19K15200
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
奥矢 恵 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40771689)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 山小屋建築 / 山岳信仰 / 御嶽山 / 白山 / 立山 / 富士山 / 室 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本を代表する山岳信仰の対象:御嶽山・白山・立山の山小屋建築を対象に、近世~近代~現代にいたる建築形態とその変容を明らかにすることを目的とする。さらに、先行して研究対象とした富士山(平成28-30年度 挑戦的萌芽研究)を加えて山岳信仰にねざす山小屋建築に特徴的な形式を抽出、その形成要因を考察して、山小屋という建築類型の把握を一層進めることを目的とする。 本年度は、御嶽山を中心に史料調査・現地調査・聞き取り調査を行い、また白山と富士山については史料調査を行った。 御嶽山では、近世後期より講によって盛んに登拝された黒沢口登山道と王滝口登山道(ともに長野県)を対象とするが、特に、王滝口には近世より昭和期までの山小屋の入札史料が多数現存する。これらより、王滝口の山小屋の建設・運営・管理の実状と変遷を把握した。近世、山小屋の運営による収益は運上金として上納される一方、農耕地の少ない木曽谷の村々に対する尾張藩からの助成金としての機能も併せ持っており、山小屋が村の公共の財産とされてきた地域特有の背景の存在が明らかとなった。 白山では、平安末期には加賀・越前・美濃それぞれに禅定道が成立し、各々に「室」と呼ばれた山小屋があった。これら三禅定道と室に焦点をあて、戦国末期から近世までの史料を用いて室の立地・数・形態とその所有・管理を把握した。各々の堂社や室は三禅定道の里宮と信仰登山口集落が采配し、近世後期まで室の所在や名称の再編には禅定道間の争論が影響した。室は木造軸組に板張りで、板葺きの切妻屋根に石を置いた。室の四周に噴石で石垣を築いて風を避けたことが明らかとなった。 また、富士山については、吉田口登山道の森林限界より下に所在した茶屋を対象に、近世から昭和期までの数・平面構成の変容とその立地・構法上の特徴を明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り、御嶽山に関する事前調査をもとに追加調査を行い、論文発表・学会発表を行った。加えて、白山についても史料調査を進め、その成果について学会発表を行った。また、これらの山小屋と比較するため、計画に先んじて富士山の山小屋(茶屋)に関する史料調査を行い、その成果について学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は白山を中心に据え、近世・近~現代における山小屋の変容過程とその形態を史料調査より把握し、室跡の石垣の遺跡等を確認するために踏査を行う。また、御嶽山についても引き続き史料調査の結果をまとめ、論文発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
所属先の変更により、当初予定していた使途・予算額にも全般的に変更が生じた。翌年度も「その他」の費目が不足することが予測されるため、この費目に充当したい。
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