2020 Fiscal Year Research-status Report
飯田下伊那地域を事例とした風景の史的変遷に関する実証的研究
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19K15201
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Research Institution | The Iida City Institute of Historical Research |
Principal Investigator |
福村 任生 飯田市歴史研究所, 研究部, 研究員 (40833918)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 景観 / デジタルアーカイブズ / GIS / 川路 / 清内路 / 旧飯田町 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究内容として、明治期から戦前の町村行政史料が豊富に残る旧川路村役場文書の調査・撮影とそれに基づく農村景観の歴史的変遷に関する実証的な分析を進めた。主な成果は、①飯田市歴史研究所で発行した『史料で読む 飯田下伊那の歴史2』に明治20年代の地籍図作成を行った測量技士に関する論考の執筆、②2021年発行予定の『飯田市歴史研究所年報19号』への川路の風景構造と民家景観に関する論文を投稿(2021年5月段階で審査中)、③清内路と川路におけるGISでの2D,3Dの復元景観の数値モデルの作成(2021年度へ継続)を進めた。 上記①では、ほとんど研究のない明治20年代の農村部地籍図の測量実態の解明の手掛かりとなる考察を行った。また②では、明治20年代の地籍図をもとに田畑山林の土地利用景観と明治30年代の建物台帳による民家の立地および類型把握を行い、明治期の段階で本棟造民家と非本棟系の二階建て四間取民家が同時に混在する農村景観がかつて発達していたことを実証的に示すことができた。③はこれらの研究において、手段として用いているGISの活用を一般公開するうえで有益となる画像表現を検討したものである。 さらに、当初の研究計画では対象としていなかったが、良好な歴史的農村景観を現在も残す高森町吉田地区を現地の協力者とともに視察した。今後の風景構造分析の重要なケーススタディとなるため、基礎資料となる明治初期の地引絵図(同地区の区有文書)のデジタル化撮影を行い、今後の研究展開の準備作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続き、史料の保管状況を優先し、当初計画の上郷・山本地区ではなく、川路地区の風景構造の分析を中心に進めた。また、すでに旧飯田町で分析した「建物原簿」に類似する川路地区の明治34年「建物台帳」史料や当時の測量技士に関する記録も見つかり、当初の構想以上に明治期の史料に関する理解が進展した。さらには景観構造のなかでの民家の存在形態についても新たな知見が得られた。ただし、現存する歴史的な農村景観のフィールド調査は実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、飯田・下伊那の地域として飯田市と阿智村の行政地域を対象に研究を進めてきたが、隣接する高森町吉田地区に江戸後期からの古民家が集中的に残ることが判明したため、建物の実測調査と地図史料の復元による相補的な分析を行うには最適の地区となることが予想される。比較研究という意味では、昨年集中的に研究を進めた川路地区は、平野段丘部の南側かつ下段に位置し、高森町吉田地区は平野段丘部の北側かつ上段に位置するため、相互に比較することで、この地域の歴史的景観の多様性や同質性を考察することが可能になると考えられる。また、この研究課題では十分に分析を進められていないが、山里地域の景観として清内路との比較も検討しつつ、最終年度として論文投稿と成果公表に努める。
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Research Products
(4 results)