2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of High Reliable Optimization System for Asteroid Deflection Missions
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19K15210
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 皓平 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30808613)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小惑星衝突回避 / 軌道最適化 / 軌道制御 / 最適制御理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球に衝突する恐れのある小惑星に対して,その軌道変更,ひいては地球衝突を回避する手法に関する研究である.計画に則り,本年度は主にGravity Tractor (GT)と呼ばれる手法に関する研究に進めた.GTとは,小惑星の近傍に宇宙機を停留させ,両者の間に発生する万有引力によって小惑星を長時間牽引・軌道変更する手法である.本研究では,小惑星の牽引方向に対して垂直に交わる平面上を宇宙機が周回する特殊な牽引軌道を想定して研究を進めた.本軌道はArtificial Halo Orbit (AHO)と定義され,複数宇宙機を用いた牽引が容易であり,宇宙機の推進システムを簡素可能などのメリットが存在する.この特殊な軌道を効果的に制御するため,小惑星と宇宙機を重力テザーで接続された1つのシステムとみなすアイディアにより,これまでの運動方程式とは異なる形式での運動の定式化を行った.本提案によってAHO上の宇宙機の運動記述,更にAHO上の軌道制御手法の定式化も容易となった.特にGTを目的とした宇宙機制御においては,小惑星周囲で宇宙機に複数のAHO間を遷移させることで,牽引に必要な燃料の節約,万有引力の制御,更には達成される小惑星の軌道変更距離の増大を達成することが可能となることを数値的に示した.また,宇宙機が周回する面の方向を傾ける制御則の提案により,小惑星の牽引方向をミッション中に自在に変化させることが可能であることも示した.本成果は,申請者が筆頭著者の論文として投稿済みであり,修正稿の査読が進行中である(K. Yamaguchi, et al., Acta Astronautica, 2021年10月投稿).また,国際会議であるInternational Symposium on Space Science and Technologyにおける発表も行った.本年度の成果は,以上である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況はおおむね順調である.小惑星の軌道変更手法として衝突機とGravity Tractor (GT)を想定し,衝突機,GTの順に研究を進めることは当初の計画通りである.GTの軌道ダイナミクスを記述する独自の運動方程式の定式化と定式化した運動方程式を元にした制御手法の構築と数値シミュレーションによる検証を行った.さらに,初年度に主に取り組んだ小惑星衝突機を用いる軌道変更手法と比較することで, GTの性質が明らかとなった.これら2手法に関する成果をもって,地球接近小惑星の性質に応じて適すると思われる手法選択がある程度可能となり,当初の最終年度である2022年3月における目標をおおむね達成したと判断した.本年度主に取り組んだGTに関しては,新型コロナウィルス感染拡大の影響で海外における現地発表の機会が得られなかったため,国内開催の国際会議における発表に切り替えることで成果を発信する機会を確保した.国内学会においては,第65回宇宙科学技術連合講演会,また当初の予定にはなかった2021年度 プラネタリーディフェンス・シンポジウム(第13回 スペースガード研究会)における研究発表をおこなった.また,同成果に関する論文投稿も行っているが,こちらは査読中である.このように,研究成果の国内外に対する発信にも引き続き取り組んだ.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の申請が新型コロナウィルスパンデミック以前であったことから,主に海外における国際会議出張旅費として申請した予算に関する余剰分が発生した.そこで,より効果的な研究成果の発信のため1年間の幾何延長を申請,承認されたことから,2022年度においても本研究テーマにおける研究を継続する.まず,新型コロナウィルス感染拡大の影響で参加を見送った国際会議での発表機会を模索し,得られた成果の発表を行う.特に,成果発表が雑誌論文への投稿及び国内開催の国際会議における発表のみとなっている,GTに関する成果発表を優先して行う.また,延長期間を利用し,より詳細な検討も進める.具体的には,先に定式化したGTの軌道制御則がより現実的なシミュレーションモデルにおいても成立することを確認する.小惑星の形状や質量分布,更にスピンなどの影響をシミュレーションモデルに反映し,制御則によるシステムの安定性を評価する.また,得られた成果の論文化についても積極的に進める.
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Causes of Carryover |
本研究計画の申請が新型コロナウィルスパンデミック以前であったことから,主に海外における国際会議出張旅費として申請した予算に関する余剰分が発生した.そこで,より効果的な研究成果の発信のため1年間の幾何延長を申請,承認されたことから,2022年度においても本研究テーマにおける研究を継続する. 主な使用予定は,パンデミックの影響で発表機会の制限された学会参加費,学会旅費としての支出である(25万円程度予定).また,1年間の延長期間を有効に活用するため,さらなる詳細な検討のための支出も行う.具体的には,延長期間分の解析ソフトウェアの購入,新たに必要となった専門書籍やそのほかの物品の購入も効果的に行う(6万円程度).さらに,本年度も海外誌への論文投稿を行うことを目指し,英文校正費用を今回の期間延長分の費用から確保する(5万円程度).
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