2019 Fiscal Year Research-status Report
波浪中抵抗増加の直立壁仮定と実船型への適用に関する研究
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19K15222
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
櫻田 顕子 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 流体設計系実海域性能研究グループ, 研究員 (00734237)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 波浪中抵抗増加 / 船首部 / 反射波 / 喫水周波数影響係数 / ブラントネス係数 / 直立壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は直立壁を仮定した理論に基づく波浪中抵抗増加推定法の検証と改良である。 本年度は本研究の初年度であり、直立壁を仮定した理論に基づく波浪中抵抗増加の推定法の確認として、直立壁に近いような肥大船の船首部(原型)の模型船を使用して水槽試験を実施した。 また、船首部の水面上形状を抉るように細くした船首部、さらに船首部を前方に伸ばし水面との角度を小さくしたような船首部、水面下の船首バルブを細く変更した船首部でそれぞれ水槽試験を実施し、波浪中抵抗増加を比較した。 原型と水面上形状を変更した形状では、波向について向波から横波、波高について実船スケールで2m~4m相当、波長について短波長域(波長船長比=0.4)から長波長域(波長船長比=1.3)について網羅的に試験を行った。水面下を変更した船首部では、波向は向波、波高は実船スケールで2m~4m相当、波長は短波長域(波長船長比=0.4)から長波長域(波長船長比=1.1)について試験を行った。 従来の推定法と船首部(原型)の水槽試験による波浪中抵抗増加を比較すると、これまで検証されている通りその差は小さく、肥大船などの直立壁に近いような船では高精度に推定できることを確認した。水面上形状を抉るように変更した船首部では原型と比較して、波浪中抵抗増加低減効果が確認できたが、さらに上端を前方に伸ばしたような船首部では波浪中抵抗増加低減効果が小さくなるという結果も得られた。さらに水面下の船首バルブを細く変更した船首部では、船首バルブが原型の船首部と波浪中抵抗増加の違いは顕著ではなかった。 ここで得られた知見により、モデル式の改良について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では第1年度に原型模型と船首部変更模型1による水槽試験を実施し、波浪中抵抗増加のモデル式について、直立壁ではない船首部を持つ実船型への適用法を検討し、第2年度には船首部変更模型2による水槽試験を実施し、第1年目に検討したモデル式の検証を行うとしている。 昨年度は原型模型と船首部変更模型1による水槽試験を実施した。水槽試験の追試を次年度実施する予定で、波浪中抵抗増加のモデル式については検討中であるが、水面上形状を抉ったような船首部では波浪中抵抗増加低減効果が見られ、さらに水面との角度を小さくするように船首部の上端を前に伸ばしたような船首部ではその低減効果が減じたような傾向があったことから、静的水位上昇位置からの波振幅上方の肥大度を表すフレアブラントネス係数が小さくなる一方で喫水周波数影響係数は大きくなっている可能性を示唆している。ここで得られた知見により、モデル式の改良について検討を行っている段階である。 以上のことを踏まえて、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度は、第1年度で船首部の水面上形状を水面との角度を小さくした船首部で波浪中抵抗増加の低減効果が減じる傾向があったことを踏まえて、原型、原型の船首部をより直立壁に近づけた船首部、水面との角度を小さくした船首部について水槽試験を実施する予定で、模型船製作、水槽試験について準備中である。 第2年度の模型船首部の形状は第1年度の水槽試験結果よりモデル作成のための単純化を行っているため、水槽試験を実施することで、ブラントネス係数・フレアブラントネス係数・喫水周波数影響係数などの係数と波浪中抵抗増加との関係がより明確になる。この結果を踏まえモデルの検証、改良を行う計画である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では第1年度に新たに船首部を製作して水槽試験を実施する予定であったが、水槽試験のために模型船取り付け治具を改良する必要があったことや、模型船船首部製作にかかる費用との兼ね合いから、第1年度は既存の船首部を使用してその一部を変更するような船首部とした。そのため、第1年度に製作する予定であった船首部は第2年度の船首部製作費用と合算して製作することとした。また模型船取り付け治具の改良にも使用する予定である。
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