2020 Fiscal Year Research-status Report
国際規則制定手法FSAにおける確率論的費用対効果評価法の開発
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19K15230
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
柚井 智洋 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (80586694)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | FSA / 費用対効果評価 / 規制評価 / 統計的生命価値 / 差の差分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,国際海事機関IMOにおける規則制定手法FSAをより科学的に実施するために下記を目的としている. a) FSAの費用対効果評価指標GCAFの実績値や確率分布を海難データ等から推定する. b) a)で設定した確率分布を利用した確率論的な費用対効果評価手法を提案し,これまでに実施されたFSA studyについて提案手法で費用対効果評価を実施し,提案手法の有効性を検証する. FSAの費用対効果評価指標GCAFは,RCO(Risk Control Option)の導入費用とRCOの導入によるリスク低減量との比で表される.今年度はa)に関連し,義務要件の効果推定を容易にするため,事故データ解析プログラムを作成した.このプログラムと海難データ等を用いて,計量経済学等の分野で実施されている差の差分析手法により,IGCコード(International Gas Carrier Code)義務化の効果を推定した.本推定は,共変量として船齢を考慮した場合と考慮しなかった場合の2種類を実施した.その結果,火災/爆発事故の発生頻度の低減量は6.99×10^-4又は8.78×10^-4[1/(隻・年)],船体/機関損傷の発生頻度の低減量は2.75×10^-3又は2.54×10^-3[1/(隻・年)]と推定された.これらは,単純にIGCコード非適用船とIGCコード適用船の事故頻度の差をIGCコードの適用効果とみなした場合の低減量より小さく,IGCコード以外の要因による低減効果を除いた効果を推定できていると考えられる.以上の成果を日本船舶海洋工学会講演会論文として纏め,発表した. 更に,船舶自動識別装置(Automatic Identification System, AIS)義務化の効果推定を実施するために,対象船舶の条件整理を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的は,FSAの費用対効果評価指標GCAFの実績値や確率分布を海難データ等から推定することであり,今年度は海難データ分析プログラムの作成とIGCコード義務化の効果推定及びAIS義務化の対象船舶の整理を実施した. GCAFの実績値の確率分布を推定するためには,可能な限り多くのGCAFの実績値を推定する必要があり,今後はIGCコード義務化による人命損失リスクの低減量の推定及びGCAFの推定を実施し,またそれと同様の分析を,船舶自動識別装置(AIS)や電子海図表示情報システム(ECDIS)の搭載義務化等について,実施する必要がある.今年度作成した海難データ分析プログラムを利用することで,これらの分析を効率的に実施可能であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
FSAの費用対効果評価を確率論的に実施する手法の確立を目標として,今後は以下のように研究実施を計画する。 [1]計量経済学等の分野で実施されている差の差分析等の手法により,IGCコード適用による人命損失リスクの低減量を推定する.また,IGCコード適用による費用増加量も推定し,IGCコード適用によるGCAFの実績値を推定する. [2]船舶自動識別装置(AIS)や電子海図表示情報システム(ECDIS)の搭載義務化等による人命損失リスクの実績値を推定する.また,費用増加量も文献調査等から推定し,AISやECDISの義務化等によるGCAFの実績値を推定する. [3]上記で推定したRCOのGCAFの実績値の確率分布を推定する.GCAFの実績値は確率分布を推定できるほど多くは推定できない可能性があるため,ベイズ更新により規制化されたRCOのGCAFの実績値の確率分布を推定する手法の構築及び,その手法によりGCAFの確率分布を推定する.
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Causes of Carryover |
IHSデータの年間利用料の一部にする予定で計上していた金額が,所内の別の予算から利用料を全額賄えたため,次年度使用額が生じた.これは次年度のIHSデータの年間利用料の一部にする予定である. 国外学会及び国内学会参加費として旅費を計上していたが,国内学会はオンライン開催であったため,国際学会は参加を見送ったため,次年度使用額が生じた.次年度の国内学会参加費又は国外学会参加費として支出する予定である.
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Research Products
(2 results)