2019 Fiscal Year Research-status Report
限界酸素濃度以下のイナーティングシステムにおける新規リスク評価手法提案
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19K15249
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
塩田 謙人 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 特任教員(助教) (30827837)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イナーティングシステム / 限界酸素濃度 / リスク評価 / 毒性ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「限界酸素濃度以下のイナーティングシステムにおける新規リスク管理手法」である。可燃性ガスを取扱うプロセスでは,通常イナーティングシステムとして,不活性ガスを導入し酸素濃度を0にし,燃焼の三要素の燃料,支燃性ガス,着火源の支燃性ガスを無くすことで火災・爆発の危険性を取り除いている。酸素濃度を限界酸素濃度(LOC)以下にすることで火災・爆発の危険性を小さくしている。LOCは燃料の濃度によらず、燃焼が生じない最小の酸素濃度である。既往のLOC研究においては燃焼・爆発の予防に焦点が当てられており,LOC以下で生じたガスの有害性については議論の余地がある。そこで本研究では,LOC以下の組成で生じる有害性ガスに着目し,LOC以下での異なる組成領域に起こる反応を計算および実験的手法の両面から解明する。初年度は,低級炭化水素をモデルガスとした実験および計算的に熱分解で生じるガスの特定を試みた。計算的検討において,炭化水素ガスおよび窒素と酸素の混合比,反応温度を変更した際の生成ガスの違いを把握した。実験的検討では,計算より得られた結果から条件を設定し,耐圧試験容器を用いて生じた熱分解ガスを検知管および生成ガス分析装置を用いて解析した。その結果,計算・実験の両面から毒性ガスの生成を確認することができた。一方で,計算および実験に対する課題抽出や精度向上の必要性が明らかとなったことから,来年度は本年度の実施内容を継続しつつ抽出した課題に対して解決を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計算的検討において,プロパンをモデル炭化水素として酸素,窒素との混合比,温度をパラメータとして変化させ毒性ガスの発生挙動について解析した。本検討で着目している毒性ガスである一酸化炭素やシアン化水素の発生する条件を予測することができた。さらに実験的な検討からは計算により得られた条件をもとに実験系を設定し,プロパンと酸素,窒素を耐圧試験容器内,等温環境下で反応させた。その結果,検知管で一酸化炭素,シアン化水素を確認することができたが,ガスクロマトグラフィー・質量分析装置ではシアン化水素を確認することができなかった。本結果から翌年以降は実験系の改良を予定している。また,計算から予測された結果と実験結果が一部異なることから計算方法や精度に関しての課題を抽出することも出来た。学会発表においては,検討に必要な毒性ガスの分析・評価方法に関する成果を国内外で報告した。以上より,おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は引き続き炭化水素をモデルガスとして,2019年度に抽出された課題に対して計算・実験的な検討を実施する。計算においては現在使用している熱力学モデルと異なるモデルや新たに熱力学データを追加したものを用いて計算する。どの反応が毒性ガスの発生に寄与しているか解析する。実験においては炭化水素ガスの等温加熱試験システムの改良に加え,生成ガス分析の定量性の向上を目指し,生成ガス種に適した検出器,カラム,標準ガスを用いたガスクロマトグラフィーの実施を予定している。計算および実験結果の比較から毒性ガスの発生条件や環境について考察する。
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Research Products
(4 results)