2019 Fiscal Year Research-status Report
自然環境保全と防災に資する詳細な地形データを用いた地すべり斜面の抽出と危険度評価
Project/Area Number |
19K15257
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
鄒 青穎 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (40750055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地すべり / 危険斜面 / 地すべりの活動履歴 / 変位計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は白神山地最西部の津軽十二湖地すべり地とその東部の大川地すべり地を主対象に,室内・野外両面で調査研究を遂行した.LiDAR-DEMによる詳細地形図を用いて地すべり地形の判読を行い,精査を行うために地表踏査も行った.津軽十二湖地すべり地では,流山や舌状小尾根地形や巨礫や湖沼群など,十二湖を形成した地すべりの運動や範囲を示す痕跡が各所に見られる.さらに,高密度電気探査を行い,青池の東側と西側の丘陵地形において,それぞれ,東側の丘陵地形の地表下10~20m,西側の丘陵地形の地表下20~30mに崩積土と目される比抵抗値の大きい物質を見いだした.また,地すべりの冠頭部付近の斜面では,重力変形により形成された変状地形を複数見いだした.また,その斜面下部が切断されたため,再度不安定化になる場合があるので,詳細な地形形態と斜面内部構造との関係の調査やその崩壊発生危険度の評価は今後の課題となる. 大川地すべり地は,過去に大きな地すべりが起きたと推測される場所であり,先行研究の結果から現在も地すべり変位が進行中であると考えられる.大川地すべり地において自然環境保全の制約を受けずに地すべりの変動を詳細に観測するため,2機のGNSS観測機材を用いた地すべりの時系列歪量観測の予備解析を行っている.解析の結果から,電子基準点と観測基準点間および観測基準点と計測点間における解析結果の標準偏差が10cm程度と,精度があまり良くないことが分かった.標準偏差が大きくなる原因として,観測基準点の上空視界が悪いことを見いだした.今回の計測における課題を解決する方法として,上空視界の良い場所に観測基準点の移設や増設を検討する.この他,地すべりの変動履歴を検討する道筋を探るために,地すべりの発生と樹齢・年輪幅の反応との関係を解析し,地すべりの変動履歴は樹齢・急激に変化する年輪幅とよく対応することを見いだした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査はほぼ計画どおりに達成でき,目標としていた微地形検出手法の検討やGNSS予備解析等もおおむね完了した.成果の一部は査読論文の投稿や学会発表において公表する予定がある.一方,作業時間の確保が難しかったために,GISを駆使して自動的に行う,広範囲な変動斜面の微地形判読が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書に記載したとおり,令和2年度以降は地すべり発生箇所での地すべり活動履歴や地すべりの変動の把握等の解析を進めていく.また,令和元年度の調査研究により,樹木の伐採や地盤の調査には大きな制約がある自然環境保全地域では,GNSS観測手法が地すべりの時系列歪量観測に有効な可能性があることが確認されたので,上空視界の良い場所に観測基準点を移設や増設することを検討し,精度を上げることが期待される.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,いくつかあげられる,地形データ処理用コンピューターの未購入は,今年度の解析量を勘案し,当研究室の既有のコンピューターを用いて解析することが可能であるためである.また,ArcGISソフトの他の地形解析に必要なツールボックスも購入すると金額は予定より高価になる.その代わりに,無料で公開されているQGISを使用し,地形解析を行っている.一部の解析は,MATLABソフトを用いて研究を進めている.また,当初予定した衛星画像の購入を留保し,国や地方自治体が有する同様のデータの公開状況を見きわめることにしたためである.
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Research Products
(3 results)