2019 Fiscal Year Research-status Report
合理的な「最悪シナリオ」の想定は如何にあるべきか?-原子力災害リスク管理を例に
Project/Area Number |
19K15271
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菅原 慎悦 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (70638006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 安全目標 / 合理的最悪シナリオ / リスク管理 / リスク評価 / How safe is safe enough |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、「複雑な社会-技術システムのリスク管理に資する、合理的な『最悪シナリオ』の想定はどうあるべきか?」というリサーチ・クエスチョンについて、当初計画の記述に沿い、原子力災害リスク管理を具体例にとって研究を行った。特に、原子力安全において古くから根源的な問いとして投げかけられてきた"How safe is safe enough?"と、米国や国際原子力機関等で確立されてきた原子力安全目標の概念枠組みについて広範な文献調査を行い、その歴史的背景や社会的意味付けについて考察を行った。我が国の安全目標をめぐる議論を米国等と対比させてみると、我が国ではリスク管理の意思決定における恣意性排除と没個人化の側面が強調され、高度な責任ある専門家判断の再構築の必要性という視点が後景化しがちであること、また定量的リスク評価により意思決定を自動化しようとする傾向があること、などが浮かび上がった。とりわけ、東京電力福島第一原子力発電所事故後の原子力安全規制の文脈においては、こうした傾向が顕著に観察されている。こうした成果の一部は、日本原子力学会2019年秋の大会にて口頭発表を行ったほか、東京大学大学院工学系研究科リスク俯瞰工学講座等の主催するシンポジウムにて講演し、さまざまなフィードバックを得た。また、年度後半には、国際技術史学会(Society for the History of Technology)およびOECD/NEAのワークショップ“The nuclear and social science nexus”に参加し、肯定的な評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度においては、上述のように当初計画に沿って広範な文献調査を実施したほか、成果の一部は国内外の学会等にて発表しており、概ね順調な進捗を見ている。ただし、年度途中の転職により生活上の大きな変化があったことや、米国等における安全目標や関連するリスク・ガバナンスの既往研究が当初の想像以上に豊かであったことなどから、文献調査の過程に当初計画よりも多くの時間を費やしている状況である。しかし、これらの状況は、当初計画に根本的な見直しを迫るものではなく、むしろ当初の問題意識の妥当性を再確認する結果となっているのに加え、新たな研究者人脈の構築にも役立っており、全体としては概ね順調に進展していると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画においては、2020年度は前年度に実施した国内外の既往研究の渉猟から得られた視点をもとに考察を深め、国内外の関連研究者・実務者等へのヒアリングや意見交換の実施を予定していた。しかしながら、今般の新型コロナウイルスをめぐる状況に伴い、予定されていた学会やシンポジウム等がほぼ全てキャンセルとなり、国内外を問わず物理的移動を伴う出張は当分の間非現実的となっている。このため、本年度は引き続き文献調査を深化させ、成果の公知化に努めるほか、可能な限りWEB会議システム等を用いて国内外の研究者等とのディスカッションを行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年2月・3月に予定していた国内出張(2月:北海道大学での学際研究シンポジウム参加、3月:福島大学での原子力学会参加)が新型コロナウイルスの影響により中止となったため、次年度使用額が生じた。当該会合が2021年度内に開催される場合にはその旅費に充当し、開催されない場合には文献収集や論文投稿等に使用する計画である。
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Research Products
(9 results)