2020 Fiscal Year Research-status Report
合理的な「最悪シナリオ」の想定は如何にあるべきか?-原子力災害リスク管理を例に
Project/Area Number |
19K15271
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菅原 慎悦 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (70638006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 安全目標 / リスク管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の当初計画では、原子力分野のリスク管理をめぐる「最悪シナリオ」に係る考察を深めるとともに、英国の産業リスク規制やスウェーデンの放射性廃棄物処分等、他国における類似事例の調査を行い、横断的な分析を実施することとしていた。 しかし、COVID-19の影響を受け、出席を予定していた国際会議(欧州リスク学会等)が中止・延期となり、国外出張も不可能な状態が続いたため、現地でのヒアリング調査から関連分野の論文を渉猟する形式に研究方法を切り替えた。具体的には、リスク・ガバナンス論、科学技術社会論、無知の社会学(sociology of ignorance)等の近年の議論を参照しつつ、「安全目標」や確率論的リスク評価等の活用と課題についての考察を行い、論文を投稿した(Nuclear Technology誌、および年報『科学・技術・社会』誌、いずれも査読を経て印刷中)。また、原子力安全・防災分野の専門家や実務者らとの議論を通じ、原子力安全の前提となっている認識枠組みを問い直す必要性や、その過程におけるリスク・コミュニケーションの重要性等について検討を深めた(2021年春の日本原子力学会での口頭発表および議論)。 加えて、COVID-19自体が「最悪シナリオ」をめぐる課題を含んでいると考え、感染症の数理モデルによる予測結果がどのように表象されたのかに着目し、第1回目の緊急事態宣言期間中の新聞報道に関する分析・考察を行った。同成果は、査読論文として『社会安全学研究』に公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響により当初の研究計画の一部変更を余儀なくされたが、その分、当初予定していたよりも広範囲の文献を収集・購読したこと、またCOVID-19とそれをめぐる社会的対処自体をも研究対象としたことにより、本研究課題の中心的問いである「最悪シナリオ」のありようをめぐる考察は、むしろ深まったと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もCOVID-19の影響が継続し、国外出張等に大きな制約がかかることが予想される。そのため2020年度と同様、関連学術分野の文献を対象とした研究アプローチを継続するとともに、過去2年間の考察内容を整理した上で、積極的に成果発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、当初参加を予定していた国際会議や国外出張が中止となったため、旅費の使用が大幅に抑制された結果、次年度使用額が発生した。次年度は、これまでの研究成果を整理した上で英文誌への査読論文投稿を複数検討しており、これに係る英文校正や投稿料として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)