2019 Fiscal Year Research-status Report
二重K2NiF4型酸化物におけるカチオンオーダーと物性
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19K15280
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 孟 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50827045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カチオンオーダー / 軌道秩序 / K2NiF4型構造 / ペロブスカイト関連構造 / 磁性 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、K2NiF4型構造(層状ペロブスカイト型構造)におけるカチオンオーダー(この構造を二重K2NiF4型構造と命名)とそれに起因する物性発現に注目した研究を行ってきた。はじめに、(La1/2Sr1/2)4MnMO8 (M = Co ,Ni) とSr4CoMO8 (M = Nb, Ta)の合成を、長時間徐冷によるカチオンオーダー促進のアイデアに基づいて進めた。前者では、徐冷による(局所的なカチオンオーダー)磁性の変化が見られた。しかし放射光X線回折による精密構造解析より、結晶構造の二次元性に起因して、結晶構造全体でのカチオンオーダーは起こっていないことが分かった。次に異種カチオンオーダーのみならず、電荷や電子軌道秩序に起因する二重K2NiF4型構造の物性にも注目した。本研究では、Mn4+への電子ドープ系Sr4Mn1-xMxO8 (M = Nb, Ta, X < 0.25)の合成に成功した。磁気特性評価から、低温で二次元性と非磁性イオンの導入によるスピングラス状態の出現が見られたが、電荷や電子軌道秩序は現れなかった。さらにこの物質に関連して、ペロブスカイト型酸化物CaMn1-xSbxO3の磁性に注目した研究を行った。その結果「軌道秩序とスピン構造転移に起因する、リバーシブルな熱誘起自発磁化反転現象」が起こることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究を進めていたK2NiF4型構造(層状ペロブスカイト型構造)に関しては、結晶の二次元性に起因して、カチオンオーダーが起こりにくいことが分かった。研究を進める中で、関連物質ペロブスカイト型酸化物CaMn1-xSbxO3において、「軌道秩序(カチオンオーダーの一種)とスピン構造転移に起因したリバーシブルな熱誘起自発磁化反転現象」を発見した。これは今までに例がなく材料応用の観点からもインパクトの大きい発見であるため、論文(速報版)の投稿準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に高圧合成装置を導入し新物質探索の可能性が拡がった。さらに来年度は高圧装置を改造することで、最大12万気圧までの超高圧合成を可能にする。これを用いて、K2NiF4型構造(層状ペロブスカイト型構造)および関連物質(ペロブスカイト型酸化物やイルメナイト型酸化物)を持つ新物質の探索、カチオンオーダーと軌道秩序に注目した物性評価を展開する。
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Causes of Carryover |
中性子実験を行う予定であったが、当該施設の事故により実施できなかったため、旅費や滞在費、実験準備費用分が次年度使用額となった。翌年度、高圧合成装置の改良費用に使用する。
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