2019 Fiscal Year Research-status Report
Fast proton transport in WO3: its demonstration and elucidation of the mechanism
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19K15286
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 一誓 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60821717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロトン伝導体 / 燃料電池 / イオン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、水素を含有する酸化タングステン(HxWO3)が示す超高速プロトン輸送を実現する因子を明らかにすることを目指している。本研究開始以前は、WO3のプロトン伝導性は、水素(H2)を注入したHxWO3と重水素(D2)を注入したDxWO3の電気伝導性の差から見積もっていた。この測定はプロトン伝導性を間接的に明らかにするものであり、当該年度では、これをより直接的に測定することを試みた。 SPSで作製したWO3を水素中で、電流を印加しながら加熱することで、HxWO3を作製した。昇温脱離ガス分析法により、HxWO3から脱離するH2およびH2Oを定量し、含まれるプロトンの量(xの値)を決定した。 得られたHxWO3焼結体の両端に、水素濃度差をつけ、HxWO3内を拡散するプロトンの量をCaZrO3の水素ポンプを用いた水素検出器により定量した。これによりHxWO3中のプロトンの拡散係数を決定した。得られたプロトンの拡散係数から移動度を算出すると、従来のプロトン伝導帯よりも1桁高い移動度を有することがわかった。このことは、申請者が予想していた高速プロトン輸送が存在することを支持する。 また、昇温脱離ガス分析法から求めたキャリア密度(プロトン密度)と併せることで、HxWO3の輸率がおおよそ1万分の1であることが明らかとなった。 HxWO3のプロトン伝導度や輸率がこれまで報告されてこなかったのは、その電子伝導性が極めて高いがゆえにプロトンの移動に関する測定が困難であるからという申請者の予想と一致する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HxWO3が含有するプロトン量を、昇温脱離ガス分析法によって決定した。プロトン量は、プロトン伝導性からプロトン移動度を算出する際に必要になる数値であり、プロトンの輸送現象を評価する上で重要である。また、プロトンの拡散係数から、HxWO3のプロトン伝導度および移動度を見積もることができた。以上より、本研究はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HxWO3に電圧を印加した際の、電流値と輸送されるプロトン量を観察することで、輸率をより直接的に調べる。これに加え、プロトンのみを伝導する電解質(輸率=1)をブロッキング電極としてHxWO3上に取り付けて伝導度を測定することで、HxWO3のプロトン伝導度を調べる。
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Causes of Carryover |
2019年度はCaZrO3の水素ポンプを用いた水素検知器を作製する予定であったが、他大学にある装置を使用したため作製はせず、その分の助成金を翌年度に繰り越した。繰り越した助成金は、2020年度に装置を作製するために使用する。
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