2020 Fiscal Year Research-status Report
結像型X線ナノCT観察によるセラミックスのマルチスケール焼結プロセスの解明
Project/Area Number |
19K15289
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大熊 学 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 研究員 (70838945)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射光X線CT / 焼結 / 積層セラミックコンデンサー(MLCC) / 微構造 / 内部欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
大型放射光施設SPring-8の結像型X線ナノCTを用いて、積層セラミックスコンデンサーの電極形成プロセスを観察した。積層セラミックコンデンサー(MLCC)は, 電極層 (Ni)と誘電体(BaTiO3)を交互に積層した構造をもつ.MLCCの小型化に伴い各層の厚みを薄くし,多積層化が進んでいる.内部電極層の厚みはミクロン以下,サブミクロン領域に到達した.電極層厚さがNi粒子数個分程度まで減少すると,積層体の同時焼成/共焼結で理想的な平行平板電極を実現するのは困難となる.内部電極には「不連続部」と呼ばれる欠陥が形成されることをMLCC断面の走査型電子顕微鏡像で観察した.不連続部は内部電極の実効的な交差面積を減少させ,静電容量の損失をもたらす.誘電体層の厚みの減少は電界強度の増大を意味し,誘電体は絶縁劣化しやすくなる.電極に不連続部があると,その周辺で電界強度の局所的な増強が起こる.また,電極表面から誘電体に向けて尖った部分が突き出ていると電界集中のため,漏れ電流が増え,デバイスの絶縁破壊に至る恐れがある. 最終製品の静電容量や信頼性向上および長寿命化は電極層と誘電体層の微構造に影響される.電極層の形態を制御するためには,共焼結中の微構造変化の原理を理解することが不可欠である. 本研究では,電極厚みがサブミクロンレベルとなり,Ni粒子数個分しかない場合のMLCCの電極形態を放射光X線ナノCTで観察した.電極層厚さの減少につれ,粒子の初期充填構造の不均質さが際立つようになる. 電極構造の不連続部の形成は,電極構造の不均質さに対応する特性長さの粗大化と関連していることを見出した. MLCCの電極構造解析例について解析したが,今後,さまざまな高信頼性セラミックスの製造プロセス開発,デバイスの信頼性評価に研究を展開する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPring-8の結像型X線CTにより、ナノスケールで電極厚みがサブミクロンレベルの積層セラミックコンデンサー(MLCC)の電極形態を観察できた. 電極層厚さの減少につれ,粒子の初期充填構造の不均質さが際立つようになる. 電極構造の不連続部の形成は,電極構造の不均質さに対応する特性長さの粗大化と関連していることを見出した. 本研究では, MLCCの電極構造解析例について解説したが,今後,さまざまな高信頼性セラミックスの製造プロセス開発,デバイスの信頼性評価に活用されると期待される.また本研究成果は、国際学術誌に論文発表を行い、招待講演も行った。以上の理由により、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 引き続きSPring-8のX線マルチスケールCTを用いて、加圧焼結の負荷圧力によって、どのようにセラミックスの破壊源となりうる欠陥が消失していくのかを段階的に観察し、強度に影響する欠陥の消失過程を解明し、構造物の高機能化と安全性・信頼性向上のための材料開発およびプロセスに役立てる。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナの影響があり、本来2020年5月にSPring-8へ出張予定であったがキャンセルとなった。その分の出張旅費含む諸経費がなくなったため2020年度は科研費に余りが生じた。本年は従来通りSPring-8への出張も可能となるため、昨年度申請予定であった研究計画も本年度にまとめて行う予定である。そのために翌年度分として請求した助成金と合わせて本年度は研究を遂行する。
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