2021 Fiscal Year Research-status Report
結像型X線ナノCT観察によるセラミックスのマルチスケール焼結プロセスの解明
Project/Area Number |
19K15289
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大熊 学 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 研究員 (70838945)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セラミックス / 焼結 / 3次元微構造解析 / 放射光X線トモグラフィー / FIB-SEMナノトモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は以下の成果を得た. 1)放射光X線CTで不均質な微構造をもつガラスセラミックスのビッカースインデンテーション表面下亀裂の複雑な形態を調査した. マイクロCTでは複雑な亀裂系全体の構造を観察し, ナノCTでは亀裂の詳細な形状を明らかにした. 2)モデル系として基板上のサブミクロン粒径の金属膜の拘束焼結における3次元異方的微構造形成をFIB-SEMナノトモグラフィーにより観察した. 2次元断面の平均切片長さによる解析手法では, 焼結中の複雑な気孔構造の異方的な微構造の進展を定量的に特徴付けることができた. 表面エネルギーテンソルによる3次元解析では, 平均切片長さによる解析結果と別の幾何学的特徴を捉えており, 組織の異方性を議論するにはさまざまな特性量を解析して総合的に判断する必要があることが明らかになった. 3)焼結中のドメイン成長は, 粒子の接触により気孔チャネルが消失し,近隣粒子が結合することによって起こる. この際, 粒径は変わらないため, ドメイン成長と粒成長は似て非なる現象であることを示した. さらに, ドメイン成長は, 結晶粒の焼結だけでなくガラスの粘性焼結でも生じることを見出した. 4)加圧焼結における粗大欠陥の変形を焼結の連続体力学によって解析し, アルミナのせん断粘性率, 体積粘性率, 焼結応力の実測値に基づき, 粗大気孔変形の予測に成功した.ホットプレスや通電加圧焼結では, 最初の段階で扁平であった空隙は焼結中に押しつぶされて,完全に緻密化する前に消失することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPring-8の放射光X線CTが, セラミックスの損傷許容性, 耐摩耗性, 耐衝撃性などを兼ね備えた靭性強化機構を解明するための技術としても有効であることを, ガラスセラミックスの表面圧痕下亀裂の構造を詳細に3次元可視化することにより実証できた. また, サブミクロン粒径の金属粒子を用いたモデル実験では, 拘束焼結における3次元異方的微構造形成をFIB-SEMナノトモグラフィーにより観察し, 組織の異方性を評価するための様々な手法(平均切片長さ, 気孔方位分布, 表面エネルギーテンソルなど)を提案した. 加えて, 焼結中の組織の平均切片長さを計測することで, 粒成長とは異なるドメイン成長という概念が見られることを明確化した. さらに, ドメイン成長は結晶粒の焼結だけではなく, ガラスの粘性焼結でも生じる普遍的な現象であることを明らかにした, これらの研究成果は, 国際学術誌に論文発表を行い, 多数招待講演を行った. 以上の理由により, おおむね順調に研究が進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 原料・成形・焼結条件と部材内部に残存する欠陥の形状,寸法,空間分布の関係を解明する. 常圧・加圧焼結中の3次元欠陥収縮, 除去過程の観察を行い, メゾスケール組織ドメインと材料信頼性との関係を明らかにする. さらに, 不均質構造を持つ結晶化ガラスの靭性強化機構と内部損傷機構の3次元観察をもとに, モノリシックセラミックスと複合材料の内部損傷機構と不均質構造の関連の解明も目指す.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受け、参加を予定していた国際会議が延期となった。また、昨年度までに論文発表予定であった研究成果にSPring-8での新規追加データが加わり、発表時期が遅れてしまった。次年度は、繰り越した助成金を使用してデータを追加し(2022年6月にもSPring-8課題採択済み)、論文を執筆するとともに、国際会議での口頭発表を実施する予定である。
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