2019 Fiscal Year Research-status Report
スズ・ニクタイド層状化合物の精密合成と多機能発現に向けた物性解明
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19K15291
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
後藤 陽介 首都大学東京, 理学研究科, 助教 (60760783)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超伝導 / 熱電変換 / 層状化合物 / 電子構造 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年に層状スズ・ニクタイドNaSn2As2が転移温度1.3 Kで超伝導転移を示すことを報告した。本研究では、スズ・ニクタイド伝導層を含む層状化合物を新しい超伝導物質群として捉え、新超伝導体を探索するとともに、超伝導にとどまらない機能性物質としての開発を目的とした。 研究開始の時点で、他グループによりNaSn2As2の超伝導に関する追試が行われ、(1)転移温度が1.6 Kであること、(2) 190 K付近に電気抵抗率と比熱のわずかな異常がみられること、が報告されていた。(1)については、転移温度が試料の不定比性に敏感であるものと考え、検討を行ったところ、SnサイトにNaを部分置換したNa1+xSn2-xAs2において転移温度とxに相関がみられた。xの値を最適化した場合には(x = 0.3-0.4程度)、転移温度が2.0 Kまで上昇することがわかった(Jpn. J. Appl. Phys. 2019)。(2)については、X線吸収微細構造による局所構造解析から、層間のSn-Sn結合距離、またAs-Na結合距離にわずかな異常が認められた(J. Phys.: Cond. Mat. 2019)。この異常の起源を解明するために、放射光X線回折を用いた精密結晶構造解析や、核磁気共鳴の測定を計画している。 超伝導以外の機能性の探索としては、主に熱電変換材料としての応用可能性を検討した。母物質としては有望と思われる特性が得られているが、ゼーベック係数が小さく、ホール濃度が過剰であると考えられる。熱電特性を最適化するため、ドーピングによるキャリア密度制御を検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不定比性の超伝導転移温度の相関や、190 K付近に生じる異常についてのX線吸収微細構造による局所構造解析をそれぞれ論文発表した。これらの研究成果について国際会議において発表した。類縁化合物において新物質の合成にも成功しており、現在詳細な解析を進めているところである。研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
不定比性による物性制御が可能であることがわかった一方で、不純物ドーピングは現在までのところ成功しておらず、さらなる検討が必要である。超伝導転移温度が液体ヘリウムのポンピングにより到達可能な2 Kを超えることは、超伝導体開発を能率的に進めるために重要な課題である。また、熱電特性の最適化という観点からも、不純物ドーピングによるキャリア密度制御は不可欠である。 アルカリ金属としてNaの代わりにLiを用いることを検討している。LiはX線回折等の従来の分析手法では定量的な評価が困難であるため、核磁気共鳴等の併用を予定している。
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Causes of Carryover |
3月に国外出張が急遽キャンセルになったことが主な理由である。 次年度は試薬、ガラス管などの消耗品費として使用予定である。
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Research Products
(7 results)