2019 Fiscal Year Research-status Report
Creation of self-assembled functional nanomaterials by controlling packing arrangement of metal clusters
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19K15293
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
齋藤 典生 東京理科大学, 工学部工業化学科, 助教 (20822456)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | モリブデン / メタルクラスター / 配位子置換 / イオン置換 / 結晶構造 / 有機無機ハイブリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、八面体型モリブデンクラスター ([Mo6Xi8Xa6]2-)結晶の対称性制御や高次構造化に基づく新奇機能の開発を目的としている。本年度は、アニオンや中性の配位子を用いたXaサイトの置換反応を実施し、置換数の制御や合成したクラスターの結晶化を行った。また、[Mo6Xi8Xa6]2-の対カチオンの置換反応も並行して検討した。 (1) アニオン配位子の置換は、カルボン酸誘導体をAg塩化し、液相中で[Mo6Cli8Cla6]2-と反応させた。4-ペンテン酸銀を反応させると、全てのClaサイトを4-ペンテン酸で置換できることをMALDI-TOFMSで確認した。化学結合機能の付与を目的として、4-ペンテン酸銀にトリエトキシランを修飾した5-(トリエトキシシリル)ペンタン酸銀 (Ag-TriEOSPA)を合成し、置換反応を試みた結果、4つのClaが置換された[Mo6Cli8(TriEOSPA)4Cla2]2-をMSで確認した。 (2) 中性配位子として、ピリジン (Py)およびトリフェニルホスフィンオキシド (Ph3PO)の置換を行った。ピリジンを用いた場合は反応後、時間経過でクラスター溶液に黒色沈殿が生じ、分解反応が示唆された。一方、Ph3POの場合は分解反応は見られず、MSで[Mo6Cli8(Ph3PO)a3Cla3]+を確認した。 (3) Cs2[Mo6Xi8Xa6]のCsサイトを任意カチオンに置換する手法を開発し、アルキルアンモニウムを対カチオンとした(Cn+3H2n+10N)2[Mo6Cli8Cla6] (n = 3, 5, 7, 9)を合成した。結晶構造解析の結果、n = 9ではアルキル鎖が鉤型状にディスオーダーし、クラスターとアルキル基が層状に配列していた。また、クラスター1分子に対して4つのジクロロメタン (溶媒分子) がクラスター間隙中に存在することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、(1)Xaサイトを長鎖アルキル鎖で置換して巨大両親媒性分子を合成し、結晶化によるクラスター分子の配列制御や、自己組織化を利用したミセル等の分子会合体形成を検討する予定であった。計画当初よりも研究協力可能な学生数が増えたことから、上記に加えて(2)有機シラン配位子によるクラスター分子の架橋や、(3)対カチオン置換による有機無機ハイブリッド結晶の作製も検討項目に追加した。 計画(1)について、本年度は当初の計画通り液相中における配位子の置換反応と置換数を制御する反応条件の確立、単結晶X線回折を主とする構造解析の達成を目標に実験を進めた。配位子の置換反応について、アニオン配位子はカルボン酸誘導体のAg塩を液相中で[Mo6Xi8Xa6]2-と反応させることで、添加した配位子のほぼ全量をXaサイトに置換できることが分かった。中性配位子の置換は、クラスター分子と配位子を液相中で混合し熱還流を試みたところ、アセトン溶媒/ホスフィンオキシド配位子の組み合わせで少なくとも3つのXaサイトを置換できることをMSスペクトルで確認した。現在、単結晶を作製し、精密な置換数とその構造を分析中である。研究計画と比較すると、置換数の制御が達成できておらず、進捗がやや遅れている状況である。 新たに検討項目に加えた(2)と(3)についても、合成条件の確立と結晶構造解析を中心に検討を進めた。特に(3)は、アルキルアンモニウムを対カチオンとした(Cn+3H2n+10N)2[Mo6Cli8Cla6] (n = 3, 5, 7, 9)を合成した。n = 9ではアルキル基が2又状に分裂して鉤型構造を形成し、クラスター分子と有機カチオンが層状に配列した構造であった。クラスター分子1 molに対して結晶化溶媒のジクロロメタン4 molを構造中に内包しており、溶媒の安定性や他の溶媒の吸収についても検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
検討項目ごとに進捗度に差が生じてきたため、2020年度は、合成実験と物性評価を並行して進める。 (1) ペンテン酸Ag等のカルボン酸配位子の仕込み比で置換数を制御できるか、NMRとMSスペクトルを用いて検証する。カルボン酸の長鎖化については、カルボン酸Ag塩を作製するのに、水への十分な溶解性が必要なため、ペンタン酸(C5)程度に留める。作製したクラスター分子は、単結晶構造解析や第一原理計算を用いて、クラスターの分子配座や基礎物性を評価する。 (2) ホスフィンオキシド配位子は、クラスターと直接反応し、またエーテル化で分子修飾が容易なため、長鎖化に適している。配位子へ長鎖アルキル基を修飾し、両親媒性クラスター分子を合成する。末端にヒドロキシル基を修飾して水溶性とし、表面張力や発光特性を中心に物性評価する。 (3) 実験計画に記載した通り、有機シラン配位子修飾クラスターをシリカ粒子表面で脱水縮合反応させて、粒子表面へのクラスター分子の担持を試みる。作製した複合体は、化学結合状態や発光特性を、FT-IR, XPSやPL, TRPLを用いて評価する。また並行して、クラスター分子同士をシロキサン結合を介して架橋させて、クラスターが連結したナノ構造体の作製を試みる。 (4) (Cn+3H2n+10N)2[Mo6Cli8Cla6]を用いて、液相や気相を介した結晶格子への溶媒の吸収実験を行う。具体的には、結晶化に用いる溶媒種やその組み合わせを変化させて結晶化を行い、単結晶XRDを用いて結晶中に取り込まれた溶媒やその選択性を評価する。また、結晶を溶媒と共に密閉し、溶媒蒸気を結晶に暴露して、格子定数や吸収した溶媒量をXRDや熱分析で評価する。
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Causes of Carryover |
研究開始当初は、細孔分布測定装置の購入を計画していたが、研究進捗や作業性の観点からグローブボックスの購入に計画を変更したため、物品費の使用額に差が生じた。一方、金属クラスターの合成や薬品購入のため、消耗品費を計画当初よりも大幅に使用している。2020年度は研究補助の学生をさらに増やす計画であり、薬品等の消耗品の購入に充てる計画である。
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Research Products
(4 results)