2020 Fiscal Year Annual Research Report
金属原子導入によるダイヤモンド貫通転位の終端と電子デバイス緩衝層への応用
Project/Area Number |
19K15295
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大曲 新矢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (40712211)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 欠陥 / 転位 / 金属 / デバイス / ショットキー |
Outline of Annual Research Achievements |
ワイドギャップ半導体は、displacement energyが高く(材料劣化が小さい)、真性キャリア密度が小さく(高温による熱暴走が生じにくい)、e-h生成エネルギーが高い(電荷を生じにくく瞬間的な誤動作に強い)という特徴から、宇宙・原子炉空間で使用可能な、耐放射線デバイスとして有望である。特にダイヤモンドは単元素で構成されており、中性子による核変換が生じず、高温・高耐圧のデバイス動作が確認されている材料であり、過酷環境下でのセンサ・信号処理素子としての応用が期待されている。ダイヤモンドのエレクトロニクス応用を実現するためには、大型ウェハの確保と高品質化、素子の歩留まり制御が必須の要素となるが、本研究では「歩留まり制御」に焦点を絞って研究に取り組んだ。これまでに研究代表者らは、ダイヤモンドCVD成長中に金属原子(W、Ta、Re等)を意図的に高濃度に導入することにより、基板から膜中に進展する欠陥の伝搬を抑制し、素子の性能向上および歩留まりが劇的に向上することを明らかとしてきた。通常のエピ成長では、23%の素子歩留まりに対し、金属原子ドーピングをバッファ層として導入したデバイスでは、98%まで向上することを実証した。X線微細吸収法、電子スピン共鳴法を併用した原子レベルの結合解析により、ダイヤモンド中の金属原子は大きなひずみエネルギーを内包しており、複数の空孔欠陥を伴った特異な構造を形成している可能性を突き止めた。以上のように、ダイヤモンドの結晶成長におけるブレークスルー技術を確立し、デバイス特性の大幅な向上とその科学的な要因を明らかとし、今後のダイヤモンドエレクトロニクス実現に大きく貢献する成果を上げることができた。これらの成果は、2020年度には国際誌へ3報掲載され、また総括の成果を応用物理学会にて招待講演で発表した。
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