2020 Fiscal Year Research-status Report
はんだ接合部の接合信頼性に及ぼすはんだのクリープ変形機構と累乗則崩壊応力の影響
Project/Area Number |
19K15303
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
濱田 真行 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (90736282)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鉛フリーはんだ / 熱疲労 / クリープ / 累乗則崩壊応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
接合信頼性の観点から、はんだ接合部の熱疲労破壊の抑制が求められている。熱疲労破壊は、熱応力によるはんだのクリープ変形により発生する。よって、熱疲労破壊の抑制には熱応力によるはんだのクリープ変形量の低減が必要となる。本研究では、クリープ変形量への影響が予想されるクリープ変形機構および累乗則崩壊応力に注目し、これらの因子が熱疲労破壊の発生率に及ぼす影響の解明を目的としている。 昨年度クリープ変形機構と累乗則崩壊応力を調査した組成にSn-3wt%Ag-0.5wt%CuおよびSn-0.2wt%Gaを追加した10組成について糸半田を製造した。熱衝撃試験には、FR-4の片面スルーホール基板に16ピンのピンヘッダー(ピッチ2.54mm)をはんだ付したものを用いた。基板上のパターンは、はんだ付した各ピンヘッダーに8個のジャンパーピンを挿入することで、160箇所のはんだ接合部が直列回路となるように設計した。ジャンパーピンを挿入後、接触抵抗の低減を目的としてスズ鉛共晶はんだで、はんだ付した。高温さらし温度125℃(保持時間30分)、低温さらし温度0℃(保持時間30分)の熱衝撃を500サイクル付与し、熱衝撃試験中の回路の抵抗値の変化を測定した。また、熱衝撃付与後のはんだ表面の外観変化(き裂の有無)を調査した。 熱衝撃試験中の回路の抵抗値は温度変化により変動するが、各サイクルの最高抵抗値は熱衝撃付与開始から500サイクルまでほぼ一定の値となった。一方、はんだ接合部のき裂の有無については、基板ごとに程度の差があることが明らかになった。引き続き1500サイクルまで熱衝撃を付与する計画であり、熱疲労特性の指標となる「最高抵抗値の上昇挙動」や「き裂の発生率」とはんだのクリープ特性の指標となる「累乗則崩壊応力」との間にどのような相関があるか解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画した高温さらし温度125℃(保持時間30分)、低温さらし温度0℃(保持時間30分)の熱衝撃試験(500サイクル)を、10種類を超えるはんだ組成に対して実施した。熱衝撃試験のデータ解析については次年度に繰り越すことになったが、本年度予定していた実験は計画通りに完了した。 新型コロナウイルス感染症の拡大によりウェブ開催となった学会の出張旅費などを引張試験の消耗品費に充当して、Sn-0.5Gaなどの任意の合金について、75℃および室温で引張試験を実施した。昨年度得られた125℃での累乗則崩壊応力よりも低い温度での累乗則崩壊応力は、数MPa程度上昇する傾向がみられたが、温度依存性を考慮した剛性率で規格化することで一定値となることが明らかになった。 以上、本年度予定した実験は計画通りに進捗しており、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
はんだ接合部の熱疲労特性の指標となる「最高抵抗値の上昇挙動」や「き裂の発生率」とはんだ合金の性能指標となる「累乗則崩壊応力」との間にどのような相関があるか解析を進めるが、はんだ合金の性能指標として「はんだの延性」を示すパラメータを加える計画である。現在、破断伸びや絞りなどを候補に考えているが、適したパラメータが他にないか検討を進めたい。 また、本年度までに得られた知見を活用して、来年度から熱疲労特性に優れるはんだの開発に着手する。SAC305を超える熱疲労特性を目指す場合、Sn母相の強化のみでなく、第二相粒子による強化も必要であると考えている。合金元素の添加による金属間化合物粒子による強化では、「金属間化合物粒子の粗大化による強度低下」や合金元素とSn相中の溶質原子との相互作用による「溶質原子濃度の減少による強度低下」が懸念される。そこで、金属酸化物等のナノ粒子等による分散強化を導入したいと考えている。
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