粒界偏析元素による巨大ひずみ加工組織の熱的安定化機構の解明

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K15309
• Research Institution: Kisarazu National College of Technology
• Principal Investigator: 青葉 知弥 木更津工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (50757143)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: アルミニウム合金 / 結晶粒微細化 / 多軸鍛造法 / 加工熱処理 / 組織制御

Outline of Annual Research Achievements

Al-Mg合金と、これをベースにScを添加した合金に多軸鍛造法を用いた加工熱処理を施した。この加工熱処理条件を変化させた場合の、機械的性質について調査した。加工条件においては、一パス毎のひずみ量や累積ひずみ量を制御して多軸鍛造を施した。どちらのひずみ量を増大しても、引張強度は増大し、それに伴い伸びは減少した。Scの添加の有無で、多軸鍛造による機械的性質の変化にほとんど影響はなかった。また、多軸鍛造後の熱的安定性の評価と時効硬化を目的とし、多軸鍛造材に対し時効温度を変化させた条件で熱処理を行い、ビッカース硬さの時間変化を測定した。時効温度を変化した場合、回復の進行速度に影響するため、軟化速度は変化するものの、いずれの条件においても多軸鍛造材のビッカース硬さより軟化した。Scの添加により、熱処理による軟化は強く抑制された。また、Sc添加材では、正味の硬さは全ての条件で減少したが、特定の熱処理温度ではAl3Scの析出による硬化分と思しきピークが硬さ-時間曲線に現れた。熱的安定性に関して、組織観察および熱分析により、主要な制御因子を特定することが次年度の課題である。また、多軸鍛造及び熱処理を施した前後で、粒界偏析がどのように生じているか調査を開始した。走査型透過電子電子顕微鏡でのエネルギー分散型X線分析を粒界を跨いでラインマッピングし、加工熱処理プロセスの前後で各合金元素の偏析量を調べた。Scを添加した合金では、多軸鍛造の前後で、顕著な粒界偏析は生じなかった。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実績の概要に記載したように、本年度予定していた実験はほとんど実施できたことからおおむね順調に進展していると判断した。ただし、電気伝導性の評価が達成できておらず、次年度の計画に組み込む予定である。

Strategy for Future Research Activity

熱的安定性の評価のため、示差走査熱量計を用いた熱分析と詳細な組織観察により、熱処中に生じる、回復・再結晶や析出現象についての調査を主な課題とする。

Causes of Carryover

研究をより迅速に推進するため、新規設備を購入する必要が生じたため、次年度使用額と合わせて使用する。

Research Products

• [Journal Article] 放射光トモグラフィーによる銅合金の延性ボイド観察 (2019)
  • Author(s): 小林 正和,青葉 知弥,三浦 博己
  • Journal Title: 銅と銅合金 : 銅及び銅合金技術研究会誌 = Copper and copper alloy : journal of Japan Research Institute for Advanced Copper-Base Materials and Technologies Volume: 58 Pages: 97-102
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] 銅合金強圧延板の曲げ加工性に及ぼす表面ブラッシング影響部深さの影響 (2019)
  • Author(s): 三浦 博己,傍島 亮平,金山 弥旦,青葉 知弥,小林 正和
  • Journal Title: 銅と銅合金 : 銅及び銅合金技術研究会誌 = Copper and copper alloy : journal of Japan Research Institute for Advanced Copper-Base Materials and Technologies Volume: 58 Pages: 28-34
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] Three-dimensional structure of high-performance heat insulator produced with micro and nano particle alumina (2019)
  • Author(s): M.Kobayashi,T.Goto,T.Aoba,H.Miura
  • Journal Title: Material Characterization Volume: 154 Pages: 424-436
  • DOI: 10.1016/j.matchar.2019.06.023
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] 降温多軸鍛造したAZ31Fマグネシウム合金の焼きなましにおける微視組織および機械的性質の変化 (2019)
  • Author(s): 池田光志,樫原恵蔵,青葉知弥,小林正和,三浦博己
  • Journal Title: 軽金属 Volume: 69 Pages: 228‐234
  • DOI: 10.2464/jilm.69.228
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] ADC12合金ダイカストの熱処理におけるX線残留応力変化と微細組織不均一性の関係 (2019)
  • Author(s): 古田将吾,小林正和,青山俊三,上坂直人,谷口晧平,青葉知弥,三浦博己
  • Journal Title: 日本鋳造工学会誌 Volume: 91 Pages: 335-342
  • Peer Reviewed
• [Presentation] MOPAC Simulation of Organic Molecules Intercalated in Sr2Ca1Cu2Oy Superconductor (2020)
  • Author(s): H. Suematsu, K. Kawai, T. Aoba, T. M. D. Do, T. nakayama
  • Organizer: 2nd Indo Japan Bilateral Symposium on Futuristic Materials and Manufacturing for Next Generation Electric Vehicles and High Speed Railway
  • Int'l Joint Research / Invited
• [Presentation] 多軸鍛造を施したAl-Mg-Sc合金の機械的性質と時効特性 (2019)
  • Author(s): 青葉知弥、小林正和、三浦博己、渡邊千尋
  • Organizer: 軽金属学会第137回秋季大会
• [Presentation] Al-5%Mg-2%Si鋳造合金の時効熱処理による力学特性の変化 (2019)
  • Author(s): 小林 正和, 谷口 皓平, 古田 将吾, 豊田 充潤, 青葉 知弥, 三浦 博己
  • Organizer: 軽金属学会第136回春期大会
• [Presentation] Al-10%Si鋳造合金の引張における微細共晶Si粒子の損傷 (2019)
  • Author(s): 古田 将吾, 小林 正和, 青葉 知弥, 三浦 博己
  • Organizer: 軽金属学会第136回春期大会