2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K15315
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
小野寺 礼尚 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (80758540)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 強磁場 / 原子拡散 / 拡散係数 / 組織制御 / 機能構造材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性金属の原子拡散における強磁場効果について、起源解明を目的として課題を遂行している。本年度はFe、Tiによる拡散対を作製し、熱処理により生じる相互拡散を観察、評価している。 磁場の効果をあらわにし、磁場印加しない熱処理との差を明確に比較するため、19 Tの強磁場中での拡散促進の熱処理を12、24、36 h、無磁場ではこれらに加えて48 hの熱処理時間で実施した。磁場中熱処理には、東北大学金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センターの20 T無冷媒超伝導マグネットを使用した。熱処理した拡散対における拡散の進行は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた組織観察によって行った。熱処理前はそれぞれ純Fe、純Tiの組織を有するが、相互拡散が生じることでFe-Tiの接合界面近傍には合金層が形成されるため、純金属の組織的特徴と大きく異なる。組織が変化した領域の幅を原子が拡散した距離として、組織観察から相互拡散の距離を求めた。組織的特徴の変化と拡散距離が一致していることは、SEM付属のエネルギー分散型X線分光装置によって確認した。 これらの熱処理および組織観察の結果、Fe-Ti拡散対においては、Fe中へのTi原子の拡散を無視できるほどTi中へのFe原子の拡散が大きく、このTi中のFe原子の拡散は強磁場印加によって明確に抑制されることが明らかとなり、解析の結果、強磁場印加によって拡散係数Dが減少していることがわかった。 また磁場勾配中で同様の熱処理を行なった結果、磁場勾配に対して、平行・反平行のFe原子の拡散方向で明確な差は確認されなかったことから、この磁場効果は、拡散現象に対する磁場の熱力学エネルギーとしての寄与であり、原子の拡散が磁気力の影響を受けていないことがわかった。 次年度は、同じくFe、Tiによる拡散対を用いて、拡散係数Dの磁場強度依存性を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Fe-Ti拡散対における拡散の強磁場効果を明確にすることを目的として実験・考察を行なった。結果として、磁場が拡散係数の減少に寄与していることが明らかとなった。拡散係数Dはアレニウスの式に従う熱活性パラメーターであることから、拡散現象に対して磁場は熱力学エネルギーとして寄与していることを明らかにすることができた。また、磁場勾配は拡散方向に影響を及ぼさなかったことからも、磁気力は拡散に影響せず、磁場はエネルギーとして拡散に寄与することが示された。これらの結果によって、次年度に計画していたFe-Ti拡散対における拡散の磁場依存性を明らかにするための実験条件決定の指針を得ることができたと共に、磁場効果の比較に必要な無磁場下のデータの蓄積も順調である。また、次年度後半にはFe-Co拡散対を用いた実験を計画しているが、特化物であるCoの研磨などを実施するための設備の準備も順調である。 以上の理由から、課題は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた結果について詳細に議論するために、異なる磁場強度での熱処理および、熱処理と同条件における磁化測定が必要となる。次年度は、Fe、Ti、Co単体の高温強磁場中磁化測定を実施し、磁場のエネルギー的寄与を定量的に議論するためのパラメーターを実験的に決定する予定としている。さらに、拡散係数の同一温度での磁場依存性を明らかにした上で、熱処理温度を変更した実験も積み重ね、磁場中の拡散係数のアレニウスプロットを作成し、磁場中拡散係数の定量化に取り組む予定である。拡散係数の磁場依存性を得ることで、磁場による影響を受ける因子を明らかにし、磁場効果の起源解明のための知見を得る。 また、研究期間後半に取り組む予定である強磁性金属同士のペアであるFe-Co拡散対における磁場効果の検討のために、熱処理温度、時間について最適条件を探索し、強磁場実験を限られた回数で効率的に成果を得るための準備を行う。
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