2019 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of metal-ceramic composites by Ni-CNT coated ceramic particles.
Project/Area Number |
19K15325
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
鈴木 庸久 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (90501479)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 複合めっき / 高温軟化 / ポーラス超硬 / 被覆セラミックス粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体製造プロセスに用いられる真空チャックや,射出成形時に発生するガス抜き性能を向上させた金型などの素材として,連続的な気孔を有する機能性金属セラミックス複合材料(以下,ポーラスセラミックス)の高性能化の要求が高まっている.ポーラスセラミックスは,硬質粒子とバインダ金属からなる複合材料である.たとえば,ポーラス超硬は,炭化タングステン粒子とコバルトあるいはニッケルなどのバインダ金属を用いて,焼結法により成形されている.ポーラス超硬は,他のポーラスセラミックスに比べて,電気・熱伝導性,強度,耐摩耗性に優れる特徴を有している.しかし,ポーラス超硬は,気孔率の制御しつつ,焼結時の歪みを抑えた低温プロセスでの製造方法が確立されていないという課題がある.さらに,近年注目されている3Dプリンティング技術でのポーラス超硬の形状創成を考えた場合も,製造プロセスの温度を下げることが求められている. 本研究では,比較的低温でポーラス超硬を製造するために,予めバインダ粒子をコーティングした炭化タングステン粒子を用いることを検討している.コーティング粒子を用いる目的は,コーティング金属を粒子同士の接触点で確実に作用させ,粒子同士の結合を促すことと,コーティング金属に高温軟化特性を持たせて低温での成形プロセスを可能にすることである. 当該年度は,1)コーティング被膜の設計,2)コーティング粒子の作製方法について検討した.1)については,ニッケル被覆にカーボンナノチューブを複合化することで,高温軟化特性を発現させ,界面接合に影響を及ぼすことを確認した.2)については,電解バレルめっきと,超音波援用無電解めっきを検討し,粒子へのニッケル被膜の成膜条件を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,電解めっきおよび無電解めっきによるコーティング被膜の設計に取り組んだ.カーボンナノチューブを均一にコーティング被膜に複合化するために,めっき液に強力超音波を加える超音波援用めっき法を用いた.この手法により,カーボンナノチューブを均一分散させたカーボンナノチューブ複合ニッケルめっき被膜の成膜に成功した.このカーボンナノチューブ複合ニッケルめっき被膜は,常温では,通常ニッケルめっき被膜の2~3倍の硬さを有するが,400℃以上の高温下では著しく硬さが低下する.この高温軟化特性は,カーボンナノチューブとニッケルの界面でのすべり,カーボンナノチューブとニッケル界面に存在する多くの転位に起因する再結晶エネルギー,ランダム配向のナノ多結晶体であることによるものと推測される.このカーボンナノチューブ複合ニッケルの有する上記特性を用いて,塑性加工による変形特性を検証したところ,約500℃においてマスター型からミクロンサイズの微細形状転写が可能であることがわかった.これらの結果から,このカーボンナノチューブ複合ニッケルめっき被膜を接触させた状態で,加熱・加圧することによって,カーボンナノチューブ複合ニッケルめっき被膜同士の界面において,大変形によって接触面積が増大し,界面での再結晶・粒成長が発現でき,接合強度が得られると考えれる. さらに,当該年度では,コーティング粒子の作製方法について検討した.電解バレルめっきと,超音波援用無電解めっきを検討し,粒子へのニッケル被膜の成膜条件を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,予めカーボンナノチューブ複合めっきを被覆した炭化タングステン粒子を用い,ニッケル-カーボンナノチューブ被膜が有する高温軟化特性及びランダム配向ナノ多結晶体である特性を利用して,比較的低温でコーティング被覆炭化タングステン粒子同士を結合した強固なポーラス超硬の製造方法の確立を目指す. 今後は,超音波援用電解バレルめっきと,超音波援用噴流式無電解めっきの2つの方法によるカーボンナノチューブ複合ニッケル被覆WC粒子の製造条件の検討および製造方法の確立を目指す.特に,カーボンナノチューブの均一な複合化,ニッケル結晶サイズ,成膜速度(膜厚)の制御を実現する.さらに,カーボンナノチューブ複合ニッケルめっき被膜の界面接合挙動の解明を目指し,接合強度を測定するとともに,界面の接合状態の観察を行い,界面における再結晶および粒成長の状態を調べる. 最後に,ホットプレスにより,カーボンナノチューブ複合ニッケル被覆炭化タングステン粒子を原料とするポーラス超硬を成形する条件を検討する.成形温度,加圧力の条件を検討し,ポーラス超硬の強度,気孔率の評価を行う.特に,カーボンナノチューブ複合ニッケル被覆率がポーラス超硬の強度および気孔率に及ぼす影響を評価する. 以上の検討により,カーボンナノチューブ複合ニッケルめっき被覆WC粒子を用いて,気孔率を制御した,成形時の歪みが少なく,成形後の変形が小さいポーラス超硬の成形が可能であることを示す.本研究の成果は,ポーラス超硬のみならず,さまざまな機能性金属セラミックス複合体の開発や,金属3Dプリンタによる機能性金属セラミックス複合体の造形への指針を示すことをめざす.
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