2020 Fiscal Year Research-status Report
無電解めっき法によるインバーFe-Ni合金の成膜プロセッシングと内部歪の制御
Project/Area Number |
19K15330
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Research Institution | Kyoto Municipal Institute of Industrial Technology and Culture |
Principal Investigator |
山本 貴代 地方独立行政法人京都市産業技術研究所, 京都市産業技術研究所, 主席研究員 (60745206)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱膨張制御 / 無電解めっき / インバー合金 / Fe-Ni |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄-ニッケル(Fe-Ni)合金は、合金比率によりその線膨張係数(CTE)が1~13 ppm/Kの範囲で制御可能な実用合金としてユニークな特性をもつ。これまで、低熱膨張(インバー)特性を示すFe-Ni合金について、無電解めっき法を用いた新たなプロセッシングの開発を行っている。しかし、成膜の制御が困難なため、成膜過程を明らかにする研究はほとんどなされていない。本研究では、無電解インバー合金めっきの析出反応プロセスについて明らかにし、薄膜の内部歪発生および加熱時の熱応力挙動について調査する。 今年度は、電気・電子デバイスに多用されるシリコン(Si)基板に及ぼす無電解インバー合金膜の機械的な影響を検証するため、成膜時の内部歪や、デバイスの高温使用時(300℃)を想定した膜の熱応力挙動について、TEM等による微細組織観察と関連付け詳細に評価した。 従来の無電解Ni-B合金めっき膜は、約270℃で膜の構造変化に起因する収縮によって、異種材料(Si基板)界面に著しい引張応力が発生した。一方、新規な無電解インバーFe-Ni-B合金めっき膜は、300℃までの加熱において、微細組織のドラスティックな変化は生じなかった。さらに、膜のCTE値は、Ni-B膜は13 ppm/Kであったが、インバー膜は8 ppm/KとなることでSi基板のCTE値(3 ppm/K)との差が減少し、300℃に加熱した際の熱応力が軽減されていた。 以上の結果から、Si基板上の無電解インバー合金めっき膜の300℃に加熱後の熱応力は、Ni-B合金めっき膜に比べて低い値を示すことが明らかとなり、熱応力の観点から耐熱メタライズ層としての適応が期待される。 また、成膜速度を向上させるめっき条件についても調査した。電気化学的な観点から効果的な条件を選定し、析出速度が約2倍に向上した。析出過程および膜の物性等については、次年度に明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度得た知見を基に、種々のFe含有率を有する無電解Fe-Ni-B合金めっき膜を作製し、その熱応力挙動について、TEM等を用いた金属組織学的な評価により、膜応力と組織・結晶構造とを関連付けて検討を行うことができた。また、昨年度実施した成膜過程の電気化学的な考察結果から、めっき析出速度を向上させる指針についても得られつつある。したがって、当初の計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、成膜速度を向上させためっき浴から得られた膜についても成膜応力や熱応力挙動について評価する。これらの知見より、産業利用としても可能なプロセスとなりうる指針を得る。
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Research Products
(3 results)