2020 Fiscal Year Research-status Report
粒子分散液の乾燥特性推算シミュレーションに基づく乾燥欠陥の課題解決
Project/Area Number |
19K15335
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辰巳 怜 東京大学, 環境安全研究センター, 特任助教 (00749202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コロイド / 乾燥特性 / スキン層 / 偏析 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
電池電極の作製など微粒子分散液の塗布乾燥工程において,スキン層や偏析などの乾燥欠陥(構造欠陥)の発生の防止が課題となる.乾燥欠陥防止のための乾燥条件の探索が乾燥特性(乾燥対象の含有液量減少速度の時間変化)の測定を通じて行われているが,乾燥欠陥発生の体系的な理解は十分ではない.本研究は,数値シミュレーションを用いて乾燥欠陥防止条件を明らかにすることを目的としている.2020年度は(1)乾燥特性への粒子間固着性(バインダ添加に相当)の影響,(2)偏析発生条件の拡散モデルによる解明を進めた. (1)2019年度までに乾燥特性を計算するための数理モデルの構築および数値シミュレーションプログラムの実装を行い,粒子の分散・凝集の乾燥特性への影響を把握してきた.その上で,現実系において大きな影響を及ぼすと考えられる粒子間の固着性に着目した.粒子間固着は接触点の固定化であり,接触粒子間の並進/回転運動の拘束と捉えることができ,その力学的モデルの構築を行った.そのモデルを用いた数値シミュレーションにより,固着性が乾燥速度低下を抑制することを見出した. (2)偏析現象をマクロな移動現象として捉えることで,2成分間の交差拡散を含めた拡散方程式により偏析を記述する数理モデルを構築した.このモデルを解析することにより,偏析発生条件を考察した.偏析の発生には各成分の数密度の大小が影響することを見出し,数密度が大きい成分ほど表面に偏析しやすいことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により,研究活動に制限が発生し,遅れが生じた. その状況下でも,2019年度までに一通りのモデル構築および数値シミュレーションプログラム開発を終えていたため,ある程度の研究の進捗が可能であった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえつつ数値シミュレーションを用いて乾燥特性の計算を実施し,乾燥欠陥が発生する乾燥速度,粒子の分散・凝集性,固着性の条件を明らかにするとともに,課題解決の提案に繋げる.論文・学会での成果報告も速やかに行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により,研究活動の制限や,発表を予定していた研究集会の中止・延期・オンライン化があり,当初予定よりも学会参加費・旅費が大幅に抑えられたためである.繰越金は,論文投稿・学会発表での使用を予定している.
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