2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a thermoresponsive draw solute with zero leakage for forward osmosis process
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19K15339
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
稲田 飛鳥 神戸大学, 工学研究科, 学術研究員 (10803835)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 駆動溶液 / 正浸透 / イオン液体 / 下限臨界溶液温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高浸透圧の発現と立体的な分子構造による膜漏洩性の大幅な低減、相分離後希薄相の濃度低減による高効率DS再生を同時に実現可能な温度応答性相転移DSの開発を行うため、多分岐構造を有する下限臨界溶液温度(Lower critical solution temperature; LCST)型のかさ高い新たなジェミニ型イオン液体の創生を試みた。水酸化テトラブチルアンモニウムに対して、テトラフルオロこはく酸、ヘキサフルオログルタル酸、オクタフルオロアジピン酸、ドデカフルオロスベリン酸、およびヘキサデカフルオロセバシン酸を2:1の物質量比で水中で混合し、水を減圧留去することにより、ジェミニ型の疎水性イオン液体5種(①[N4444]2[C2F4(COO)2]、②[N4444]2[C3F6(COO)2]、③[N4444]2[C4F8(COO)2]、④[N4444]2[C8F12(COO)2]、および⑤[N4444]2[C10F16(COO)2])を合成した。続いて、これらの相分離性を確認したところ、①~③については、室温~80℃の温度域では2相に分離せず、1相となり溶解し、⑤は室温~80℃の温度域では2相に分離した。④については、室温において水中で固体、80℃においては2相に分離した。続いて、溶解していた①と②の浸透圧の測定を行った。その結果、①、②のどちらにおいても濃度の増加にともない25℃における浸透圧は増加し、50wt%水溶液で87 bar、および55 barをそれぞれ示した。①と②を比較した際、②の方が分子量が大きいために浸透圧が低下したと考えられる。これらの[N4444]タイプの合成したジェミニ型イオン液体はLCSTを示さなかったが、④付近に相分離と溶解の境界がみられたため、④の物性に近いイオン液体を合成することによりLCSTを示すイオン液体を創生できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高浸透圧の発現と立体的な分子構造による膜漏洩性の大幅な低減、相分離後希薄相の濃度低減による高効率DS再生を同時に実現可能な温度応答性相転移DSの開発を目指し、実験結果からLCSTを示すジェミニ型イオン液体の開発指針を明確にした。現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると判断する。本年度は関連した内容での受理論文は0であったが、2報の学術論文を投稿中であることから次年度はこれまでの研究成果の発表が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、高浸透圧の発現と立体的な分子構造による膜漏洩性の大幅な低減、相分離後希薄相の濃度低減による高効率DS再生を同時に兼ね備えたLCST型DSの開発を行うために、本年度の研究結果を踏まえてジェミニ型イオン液体のカチオンを水酸化テトラブチルアンモニウムを原料とした[N4444]から水酸化テトラブチルホスホニウムを原料とした[P4444]に変更したイオン液体(①[P4444]2[C2F4(COO)2]、②[P4444]2[C3F6(COO)2]、③[P4444]2[C4F8(COO)2]、④[P4444]2[C8F12(COO)2]、および⑤[P4444]2[C10F16(COO)2])を、本年度と同様の手法で合成する。カチオンの疎水性を変化させることで、LCSTを発現する高浸透圧・低漏洩性を同時に有するDSの創生を目指す。また、本年度検討したジェミニ型イオン液体はジカチオン/モノアニオン(2価)型であったが、次年度はそれに加えてモノカチオン(2価)/ジアニオン型、およびモノカチオン(2価)/モノアニオン(2価)型についても検討する。モノカチオン(2価)の合成については、二分子求核置換反応を利用して直接導入し、リンカーの長さを変化させることにより、目的物の疎水性を制御する。LCSTを発現したイオン液体に関しては、相図、粘度、浸透圧などの物性を詳細に評価する。さらにFO膜を用いた透過実験により透水性能を評価し、また相転移によるDSの回収性について評価する。
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