2020 Fiscal Year Research-status Report
体積膨張するソフト多孔性結晶の噴霧乾燥法における凝集体の構造制御と形成機構の解明
Project/Area Number |
19K15344
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大崎 修司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40802426)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ソフト多孔性結晶 / ZIF-8 / 流動層造粒 / CID-4 / ゲート吸着制御 / 噴霧乾燥法 / 数値流体計算 / 液滴群乾燥速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソフト多孔性結晶(SPC)は構造転移(体積膨張)に伴い吸着量がステップ状に増加する特異な吸着挙動(ゲート吸着)を発現するため様々な応用が期待されている。しかし,合成される材料は微粒子であるためハンドリング性が悪く,それが開発・実用化の発展を妨げている。本研究では,種々の造粒法を用いて,体積変化するSPCの特性に適した凝集体を形成することで,従来までの課題を解決する。実験的検討と数値解析の双方から,SPC凝集体形成メカニズムを理解するとともに,特異な吸着挙動を維持しながらハンドリング性能にも優れたSPCの設計に繋げる。2020年度の研究実績は以下の通りである。 1. 球形でありゲート吸着に伴う体積変化がほぼないSPCであるZIF-8(Zeolitic Imidazolate Framework-8)を対象とした。本年度は,ZIF-8粒子の流動層造粒を試みた。操作条件を最適化することで,ZIF-8粒子のハンドリング性を改善することができ,かつ吸着量の減少率は,撹拌造粒などのせんだん力を伴う造粒手法の半分以下であり,吸着特性に与える影響は低いことを示唆する結果を得た。 2. 体積変化の大きなSPCであるCID-4を対象とした。予備検討として,ゲート吸着制御を試みた結果,添加剤としてπ電子を持たない配位子を加えるという新規のゲート特性制御手法を確立した。 3. 噴霧乾燥プロセスの操作条件が液滴群の乾燥挙動に及ぼす影響を解析した。その結果,液滴群の乾燥速度は,液滴蒸発の推進力である液滴-周囲流体との温度差に強く依存していることが明らかとなった。また,装置全体の熱効率とNu数を用いて操作条件を整理し,乾燥速度との無次元相関式を導出した。液滴径分布を考慮した場合にも,この無次元相関式は有効であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流動層造粒法によって,SPCの一種であるZIF-8の流動性の改善に成功した。また,最適化された操作条件で得られた凝集体はゲート吸着挙動を示すことを見出した。また,体積変化の大きなSPCであるCID-4を対象に,添加剤としてπ電子を持たない配位子を加えるという新規なゲート特性制御手法を確立した。さらに,数値流体計算に基づいた噴霧乾燥塔内における液滴群の乾燥挙動を解析することで,操作条件と乾燥速度との無次元相関式を導出した。これらの成果は,目標達成へと直結する重要なものであり,おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ゲート吸着に伴う体積変化の大きいSPCである,CID-4とMIL-53を対象に凝集体構造が吸着挙動に与える影響を検討する。攪拌造粒,噴霧乾燥造粒,および流動層造粒を行う。このとき,凝集体構造をより詳細に解析するために,凝集体を樹脂に包埋した後にFIB-SEMにより断面図を観察し,得られたSEM像に対してボロノイ解析を行うことで,凝集体構造を定量的に評価する。得られた凝集体の吸着測定を行うことで,ゲート吸着に伴い体積が大きく変化するSPCに関して,ゲート吸着挙動の発現に対する凝集体の構造依存性を明らかにする。さらに,数値流体計算を用いて,2020年度に提案した噴霧乾燥法における液滴群乾燥速度の予測モデルの拡張を試みる。液滴内における固形成分の影響を考慮した数値計算を行うことで,減率乾燥期間を解析する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により実験を行える時間が制限され,効率的に検討を進めたため,材料費や吸着測定用の消耗品費に経費がかからなかった。次年度はCID-4とMIL-53と2種類のSPCを対象とし,粒子合成に必要な原料と造粒に必要な結合剤を消耗品費として計上する。その他,吸着測定に必要なガス類および粒子合成等に必要なガラス器具類を消耗品費として計上する。凝集体を樹脂に包埋した後にFIB-SEMにより断面図の観察に関しては,外部委託する予定である。また,数値解析による検討では,大きな計算コストが必要であるため,シミュレーションデータ保存用大容量記録媒体を設置備品費として計上する。さらに,8th Asian Particle Technology Symposium (@大阪, 10月) での成果発表と,化学工学会および粉体工学会での成果発表を行うために必要な参加費・旅費と,得られた成果を論文発表するために必要な経費を計上する。
|