2020 Fiscal Year Research-status Report
石炭由来タールの特異な溶剤特性を制御した褐炭からの高品位炭と機能性炭素材料の製造
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19K15346
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉川 琢也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20713267)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 化学工学 / 低品位炭 / 改質 / 混合溶媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
埋蔵量が豊富であるものの、水分・酸素分が多いため用途が限られている低品位炭の利用技術として、溶剤中での加熱処理により効率的な脱酸素を行う溶剤改質が有望である。本研究では、処理溶剤として水と石炭由来タールの混合溶剤に着目し、その特性を制御することで、高品位な改質炭および抽出物から炭素材料原料を製造する。 令和元年度に、石炭由来タールの一つであるカルボル油の主要成分を含むモデル溶剤による褐炭の改質反応を行い、カルボル油中の不飽和成分が固体分に付加することで、改質が補助されたことが分かった。令和2年度は、改質経路をより詳細に検討するため、分光学的なアプローチから褐炭と改質炭の化学構造を解析した。結果、改質により脂肪族酸素の割合が減少する一方で、芳香族炭素の割合が増加したことが分かり、脱酸素の進行部位に関する情報が得られた。 また、改質過程で得られた油相抽出成分に対し溶剤分画を行うことで、その軟化溶融温度を制御できる可能性を見出しており、令和2年度は、溶剤分画物の詳細分析を行うことで、軟化溶融温度との関係を精査した。極性の異なる分画溶剤としてペンタンおよびエタノールを用いて得られた各不溶分の分子量分布と元素組成を測定した。結果、エタノール不溶分は、ペンタン不溶分と比較して、重量平均分子量が大きく、酸素分が少ないことが分かった。極性溶剤を用いることで、油相抽出成分から酸素分の多い低分子量成分を効率的に除去できため、ペンタンの場合と比較し、不溶分の軟化溶融温度が上昇したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石炭由来タールと水の混合溶剤を用いた褐炭の改質機構を詳細に分析するとともに、油相抽出物の炭素材料原料としての利用に向けた特性評価を実施した。令和元年度の知見をもとに、改質経路をより詳細に検討するため、分光学的なアプローチから褐炭と改質炭の化学構造を解析した。原料褐炭と改質炭の固体C-NMR、ラマンスペクトルの測定から、改質により脂肪族酸素の割合が減少する一方で、芳香族炭素の割合が増加したことが分かり、脱酸素の進行部位に関する情報が得られた。また、油相抽出物の炭素材料利用に向け、溶剤分画物の詳細分析を行った。分画溶剤にペンタン及びエタノールを用い、溶剤極性が各不溶分の分子量分布、元素組成、軟化溶融温度に及ぼす影響を検討した。結果、エタノール不溶分は、ペンタン不溶分と比較して、重量平均分子量が大きく、酸素分が少なくなり、軟化溶融温度が約180℃増加した。極性溶剤を用いることで、油相抽出物から効率的に酸素分の多い低分子量成分を除去できたためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
褐炭の溶剤改質による高品位化は、モデル溶剤を用いた改質反応と改質前後の化学構造の解析により、改質の主要経路を明らかとした。今後は、成果の取りまとめに必要な追加実験を行い、成果発表と論文投稿を行う。併せて、油相抽出物の溶剤分画により、不溶分の軟化溶融温度を適切な温度域に制御する手法を見出しており、溶剤分画物の紡糸性を評価することで、炭素材料原料としての利用可能性を示す。
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Causes of Carryover |
研究目的をより精緻に達成するため、補助事業期間の延長が承認された。次年度は、追加実験を行い、成果を取りまとめると共に、成果発表と論文投稿を行う。
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