2019 Fiscal Year Research-status Report
The rational design for the material with high proton conductivity and low dependence on humidity
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19K15351
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 敬也 京都大学, エネルギー科学研究科, 特定助教 (90748550)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロトン伝導 / 量子効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトン伝導は生体内から触媒反応まで、あらゆる分野において存在する現象である。プロトン伝導は本来、水分子が必要不可欠であり、伝導度が湿度依存性が非常に高い。このため、プロトン伝導膜を利用する固体高分子形燃料電池では、通常なら触媒活性を向上させるのに好まれる高温条件は、水が蒸発しやすいので湿度をコントロールするためにエネルギーロスが生じてしまう。一方で、申請者が提案・実証したPacked-acid mechanismは水分子が不可欠であるため、湿度依存性が低くなることが期待される。 本研究ではある酸・塩基溶液の組み合わせにおいて、プロトン伝導における量子効果が非常に頻繁に発現し、プロトン伝導性が格段に向上することが判明した。量子効果にはトンネル効果という、通常ならば起こり得ない、高いエネルギー障壁をすり抜けるように反応が起こる現象が含まれている。この効果の発現は水分子がほぼ存在しない状況下であったため、湿度依存性が低いプロトン伝導が実現できる可能性がある。さらに、本研究の成果によって、通常なら起こり得ない難しい反応も酸・塩基溶液の相互作用に基づくトンネル効果で促進できることが示唆された。これは常温常圧では反応が難しいとされるアンモニア合成などにも応用が期待できる。また、量子化学計算によって、Packed-acid mechanismで重要な酸相互作用が、酸同士が離れていても複数の水素結合を介して相互作用しあい、Packed-acid mechanismを引き起こすことを理論的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来の目的であるPacked-acid mechanismにつながる実験結果と理論計算結果の他に、量子効果についての結果を得られることができ、当初の計画以上に発展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
組み合わせの濃度変化に伴う物性変化を追うことで、Packed-acid mechanismの他にも、より量子効果が引き起こされる条件を精査する。そして量子化学計算によってそれぞれの溶液の組み合わせをモデル化し、Packed-acid mechanismへの影響を調べるために拡散係数を見積もるのと他に、交差温度を調べてトンネル効果への影響についても理論的な解析を行う。
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